最近はカジュアル志向ですが、大人として冠婚葬祭の礼儀はわきまえておきたいですね。特に、葬儀関連では迷うこともあるでしょう。

細かな流派の違いは、その場面ごとに押さえるとして、「これだけ押さえればOK」の基本中のキホンがあります。現代礼法研究所の代表でマナーデザイナーの岩下宣子さんに教わりました。

  • 冠婚葬祭の基本を理解していますか?

冠婚葬祭の平服とは

――「平服でお越しください」という文言を見かけますが、あれはどういう意味なのでしょう?

岩下さん「『平服』は直訳すると普段着ですが、マナー的な意味では普段着ではありません。『本来なら弔意(結婚式ならお祝いの気持ち)を示して礼装で行くべきところ申し訳ありません』という気持ちを込めた、『略礼装』という意味です。

略礼装とは読んで字のごとく、礼装を一部省略したスタイルのこと。男女ともに、お悔やみごとなら喪服です。男性だったらダークスーツでもいいでしょう。女性だったらグレーや濃紺などの寒色のワンピース、アンサンブル、ツーピースを選べば無難です。

肌を見せるデザインの服は昼間はNGですが、夜はOKです。また、昼の結婚式で肌を見せるデザインの服を着る時は、ショールなどで隠す人が多いのですが、ずり落ちるなど安定しないので、ボタンなどで留めるボレロがお勧めです」。

結婚式の服装は、主役が誰かを考えればマナーは簡単。花嫁より派手にならないように気をつけつつも、お祝いの気持ちを表現するために華やかなものにするとよいでしょう、と岩下さんは言います。

礼装の服装や持ち物に関するまとめ

・平服とは普段着のことではない。
・男性はダークスーツを一着持っておく。
・女性は白を避ける(花嫁の色のため。襟など一部に白が入るのはOK)。ベージュはよい。
・女性は昼は肌を出さない。夜は出してOK。

冠婚葬祭でのアクセサリーや髪型

――お悔やみごとに備え、いざというときに慌てないためには何をしていればいいですか?

岩下さん「お悔やみごとに関しては、知識がないと慌ててしまいます。マナーに関する書籍がたくさん市販されていますが、『なぜ、そうするのか』という理由を押さえておけば安心です。就職したら、喪服と(仏教徒の方は)数珠は買っておきましょう」。

――アクセサリーや髪型はどうすれば失礼になりませんか?

岩下さん「アクセサリーはむしろ必須です。本来、女性の洋装では、ネックレスはつけてはじめて正装になります。素材は真珠、黒真珠、黒曜石、黒オニキス、黒珊瑚あたりがよいでしょう。イヤリングはどちらでもよいです。つける場合は、ネックレスに合わせましょう。

指輪は結婚指輪か婚約指輪以外は外します。髪型はお辞儀した時に落ちてこないようにまとめ、髪の色は黒でなくても問題ありません。だって、金髪の人はお葬式に行っちゃいけない? そうではないでしょう。そう考えれば、何色だっていいんです。ネイルも地味なものだったらよいです。派手で気になるなら、黒のレース手袋をしましょう」。

――決まりばかりで堅苦しいし、覚えられません!

岩下さん「なぜ喪服などの服装の決まりが必要かといえば、逆に『どんな色の洋服でもけっこうです』と言われると、かえって困りませんか? そうすると、『自分はこの洋服を着てきたんだけど、どう思われるかな? これでよかったの?』など考えて、自分のことで精一杯になってしまい、お悔やみどころではありません。

葬式といえば黒。黒を着ていけば、とりあえずその場に安心していられるではないですか。その安心感で、より遺族の方の気持ち、一緒にお参りする人の気持ちや立場で考え行動することができる。先人達が考えた生活の知恵なのです」。

マナーを学んだほうがより思いやりの気持ちを発揮できるんじゃないでしょうか。マナーとは、「人の気持ち、相手の立場で考えて、何をしてあげられるかを考えること」だと岩下さんは言います。

取材協力:岩下宣子(いわした・のりこ)

『現代礼法研究所』主宰。NPO法人マナー教育サポート協会理事長。全日本作法会の故・内田宗輝氏、小笠原流の故・小笠原清信氏のもとでマナーを学び、企業や商工会議所などでマナー指導・講演などを行う。著書に『図解 マナー以前の社会人常識』(講談社)など。