こんにちは。写真家の桐島ナオです。この連載では猫を一眼デジタルカメラで撮影する際のコツや撮影時の設定、レンズ選びなどを含めてご紹介します。今回は読者さまからの質問「夜の室内撮影のポイント」にお答えします。
読者様からのご質問
「夜の室内で愛猫を撮影すると、ブレるわ、毛のフワフワは撮影できないわ、どのWBにしても何かへんな感じになってしまうわと、ひどい有様です。連載の第2回の8枚目の写真のように、ふんわりとあたたかく猫を撮影するにはどうすればいいんでしょうか……。また、そのほか夜の室内での猫撮影ポイントがあったら教えていただきたいです」(原文ママ)
夜の室内撮影をする方は多いですよね!
当連載を読んで下さっている方から質問を頂きました。ありがとうございます!お仕事などで日中お家を空けてしまい撮影時間が夜になってしまいがちな方、多いと思います。そんな、お悩みを今回は読者の方のお写真を交えて、ご紹介します。
まずは、ご紹介頂きました。連載第二回目の八枚目のお写真は、これです!
あたたかみが感じられるよう、暖色系の色彩になるよう撮影設定と光の位置を考えています。撮影環境の灯りは、オレンジ色の白熱電球(明るくて大きなもの)がお部屋に3つある状態でした。全体的にオレンジ色が強いです。明るいといっても、昼間のように室内が明るいわけではないので、猫の黒目が大きくなっているのが分かると思います。
実際の写真
さて、質問者さまのお写真を実際に見てみましょう。
撮影環境は小さいライトが10個ほど。少しだけオレンジがかっているとのことです。小さな灯りでは猫の瞳の中までライトが届かないので瞳の中が少し暗くなってしまっていますね。また全体的に緑がかっているように見えます。
細かな設定をしていきます!
さて、撮影データをじっくりと見てみましょう。ここでは色彩の質問なのでWB(ホワイトバランス)に注目します。
質問者さま→WB晴天
筆者→3300K(ケルビン指定で撮影していました=電球モードに近いです)
WBに関しては、第4回目に記載した「猫撮影の為のホワイトバランス設定」をご参照ください。オートでも良いですが、あたたかみある色彩で撮影したい場合は、「曇天」もしくは「日陰」がお勧めです。
ここでは、質問者さまのカメラ(=NikonD7000)と同じ環境で説明します。ホワイトバランスは撮影環境によって「これが最適!」というものを決定しづらく、どれを選んだら「良い色」になるのか判定しにくいです。そんな時は、「撮れた写真」から「補正」を考えてみましょう!
ホワイトバランス設定のメニュー画面(左)から、WBを普段選択されていると思います。しかし、ここで更に右へ選択します。するとホワイトバランス補正の画面(右)が出て来ます。これはどのホワイトバランスを選択しても出来ます。(機種やメーカーが違う場合選択方法は異なりますが、補正可能なカメラは多いです)。
ちょっと難しそうなカラフルな図表のようなものが出てきますが、この図表の見方はとっても簡単。カーソルを動かして自分が「足したい」色の方へ真ん中の点を動かしていきます。今回の写真の場合はあたたかみのあるオレンジ系をもっと足したいので図表の(A)の赤に近い方へ動かします。真っ赤ではなく、少しオレンジ色がいいので、Aよりも少し上の黄色が混ざった部分が良いですね。
選択したら「OK」を押し、撮影してみましょう。写真にあたたかみがあるオレンジ色が足されていることでしょう!
実際にWBを変えて撮影してみました!
まずは見た目通りになるよう、撮影してみました。日が沈んだ後の、ガラス張りのお部屋。ほの暗くなってきていい感じなのですが、青がかった少し暗いお部屋です。
撮影設定は全て同じで、ホワイトバランスをオートにしてみました!眼で見ている色彩は青がかっていましたが、青味がとれて毛並みが白くなりましたね。では、もうちょっとあたたかみを出す為に曇りモードにしてみます!
眼で見た色とは違いますが、真っ白な毛に少しオレンジが足されてほんわかな色になりました!思わず触ってみたくなるような暖かな色彩です。
逆にクールな雰囲気を狙って青を足す電球モードもアーティスティックで面白いですね!太陽の光の下でのホワイトバランス設定でした。
今度はオレンジの電球のお部屋で撮影してみました!
黒猫をまず見たままの通りに撮影してみます。撮影環境の見たままの暗さと色調はこのような感じです。撮影設定は全て同じ。オートで見た眼通りに撮影出来ました!では、WB設定を変えてみます。
オートとほぼ同じ色になりました!つまり、オートの設定では、カメラが電球モードと同じ設定を選んでいたということになります。オートよりもほんの少しだけオレンジが入ってて可愛いらしい雰囲気ですね。では、もう少しあたたかみを足したいなぁ……と思ったので「曇りモード」にしてみましょう。
ものすごいオレンジ色になってしまいました!ちょっとこれはやりすぎだと筆者は判断しました。
オレンジ色の空間で曇りモードにすると更にオレンジが足されてしまうので、ちょっとしつこいオレンジなってしまいます。曇りモードは暖色系が足されるのであたたかみがある写真を撮る事が出来ますが、もともとオレンジ色の灯りがある状況ではやりすぎになってしまいます。
そこで設定を電球に戻し、さきほどのWB補正でオレンジを足しています。良い感じのあたたかみが足され、暗い所の黒猫の可愛いらしさとふんわり感が出ました!
WBは「これに設定しておけば正解!」というものはなく、状況や撮影した写真によって「補正」をかける事でより良いものになっていきます。とっておきの一枚、大切な一枚は、一手間かけて、是非WBをいじってみてくださいね。
(写真は全て東京キャットガーディアンにて撮影いたしました)
次回予告
次回は引き続き読者の方からのご相談に回答する「絞り優先モードで、動いている猫をブレずに撮影するには?」です。具体的な写真の説明を交えてご紹介していきます。
著者プロフィール
桐島ナオ
写真と詩を組み合わせた物語写真を中心に発表している写真家。植物と猫とカフェが大好き。PhotoCafe写真教室の講師もしています。公式HPはこちらから。