こんにちは。写真家の桐島ナオです。この連載では猫を一眼デジタルカメラで撮影する際のコツや撮影時の設定、レンズ選びなどを含めて御紹介します。今回は「猫撮影のためのホワイトバランス設定」です。

「黒猫には関係にゃい?そんなことにゃい……けど分かりやすいから白猫多めだにゃ!」

ホワイトバランスとは白を白に見えるように設定すること

今販売されているカメラのほとんどは、購入時にオートホワイトバランス=AWB(Auto White Balance)に設定されています。撮影した画像の色彩に特に不満がない場合はホワイトバランス設定をいじることは少ないのではないでしょうか。

ホワイトバランスとは、「白を白く見せること」を意味します。

夜に温かみがある電球の光の元で白猫が眠っていたら、白い毛並みのはオレンジがかった色彩に、私たち人間の目には見えます。写真を撮った際、「目で見るよりも白く撮れた」という経験はありませんか?それはカメラが自動で色を修正しているためです。

カメラはそこにある光の種類に関わらず、被写体そのものの本当の色彩を表現しようとします。それが「オートホワイトバランス」です。

「目で見た色彩はあたたかみのあるお部屋の灯りで少しクリーム色の毛並みですが……」

「AWBで撮ると周りの光源の色は関係なく、本来の真っ白な毛並みになります」

目で見たままの周りの光の影響を受けた暖色系の色の毛並み。本来の真っ白な毛並み。どちらも、可愛いのですが……この色味を「表現」として取り入れてみませんか?まずは、周りの光の影響を受けている、目で見たままの色彩の表現方法です。

目で見たままの色彩を表現する

現在販売されているデジタルカメラはとても優秀な機能のものが多く、見たままが撮れないという状況は少ないと思います。ホワイトバランスもオートのままで特に問題を感じることは少ないでしょう。

カメラメーカーによってもホワイトバランスの設定は違いますので、同じ場所でオートで撮影しても微妙に色彩は異なります。カメラによってはホワイトバランスの微調整ができますので、細かく設定すると更に見た目に忠実に撮影することができます。

「色々な光の下で、WBの組み合わせをしてみてくださいね!」

「微調整ができると更に幅が広がりますね」

微妙な目の色や毛並みなど、本当に少しの調整で表現できることがあります。細かい設定ですが、色に悩んでいる方は是非チャレンジしてみてください。

心で感じた色彩を表現する

そして、日常写真をアートに変える方法としても、ホワイトバランスは味方になってくれます。この場合はホワイトバランスを「あえて崩す」設定です。まず、太陽の光が当たる昼間のお部屋。オートで撮影した写真です。

「オートで撮るとほぼ見た目通りの毛並みですが……」

これを「くもり」の日マークに変えてみます。

「なんだかほんわかな雰囲気に……」

あたたかみがある暖色系の色が足されました。ひだまりにいる暖かさが写真から伝わりそうです!また、同じ場所で「電球」マークにすると、写真に青味がかります。

「ちょっと大人な雰囲気に」

クールな感じになりました!少しアンニュイな雰囲気が漂いますね。「くもり」マーク+「プラス露出補正」でほっこり系あったか写真に。「電球」マーク+「マイナス露出補正」でカッコイイ系クール写真になります!

同じ猫でも日によって気分が違います。その気分や、雰囲気も写真に取り入れてみるとぐっと魅力的になるのではないでしょうか。

ここに記載したホワイトバランス設定は、太陽の光が入る場所で撮影することを想定しています。室内や蛍光灯の明かりの下では上記写真とは異なった仕上がりになります。

ホワイトバランス補正がある機種の方はうまく調整して、表現の幅を広げられるといいですね。

アーティスティックなモノクロモードも是非チャレンジを!

機種によってホワイトバランスの場所にあったりカラーモードの場所にあったりする「モノクロモード(白黒モード)」。カラフルな猫たちを前にするとつい愛らしい毛色やふわふわのピンクの肉球やビー玉のような瞳を撮りたい!と思ってしまいますが……。

プラスアルファのもう1枚何か欲しいなぁ……という時にはモノクロがおすすめです!モノクロ写真をうまく撮影するコツは、光をよく読み、色彩に注意すること。何色が黒っぽくなって、何色が白っぽくなるかを考えながら撮影するとぐっと引き立ちます!

「ベージュにの床にキジ猫。可愛いけれど同系色なのでパンチを足したい時に……」

「モノクロにするとキジ柄がぐっと引き立ちます」

「背景色がごっちゃりした雰囲気のカラフルな写真も……」

「モノクロだとすっきりした印象ですね」

「特に野良猫とモノクロの相性は最高です。物語の1ページのようになります」

「白と黒だけの世界にある暖かさも素敵です」

いかがでしょうか。見たままの猫はもちろん可愛いのですが、性格やその場の雰囲気、伝えたいことにスパイスを加えるには様々な手段があります。

写真とは「真実を写す」と表記するので、被写体そのものの色彩を忠実に表現することだと思われがちですが、本来のPhotographとは「光で描く」と言う意味。

もっと自由に色彩を彩り、猫の個性や、その場の雰囲気をちょっとだけ変えてみても良いのではないでしょうか?思いもよらない表情に出会えるかもしれませんよ。

(最後の2枚以外の写真は全て東京キャットガーディアンにて撮影いたしました)

次回予告

次回は猫撮影における「よくある失敗写真とその対策」です。

著者プロフィール

桐島ナオ
写真と詩を組み合わせた物語写真を中心に発表している写真家。植物と猫とカフェが大好き。PhotoCafe写真教室の講師もしています。公式HPはこちらから。

*桐島ナオ主催の保護猫カフェ月イチ撮影会 ネコサツ!*はこちらから。