こんにちは。写真家の桐島ナオです。この連載では猫を一眼デジタルカメラで撮影する際のコツや撮影時の設定、レンズ選びなどを含めてご紹介します。今回のテーマは、読者さまからの質問「シャッタースピード優先モードで猫を撮影するとすごく暗くなる………!背景もボケない………!でも猫じゃらしで遊ぶ猫をピタリと止めて撮影したい!」です。
まずはお悩み相談のメールのご紹介から!
「よく猫カフェで撮影をします。どの猫ちゃんともたくさん遊んでいただき、すごくうれしいです。遊んでいる姿もかわいいので、愛用のカメラで撮影するんですが………。シャッタースピード優先モードで撮影すると、ピタリととまった猫はとれるんです。
でも、背景がボケないので、猫カフェの雑然とした(というのは大変失礼ですが………)感じが写ってしまうんです!あと、シャッタースピードも速くすればするほど当然ながら写真も暗くなっちゃって………。露出もプラスにしてISOもあげてますが、どうもうまくいきません。シャッタースピード優先モードで、(1)ピタリと猫が止まり、(2)写真が明るく、(3)背景がボケる設定ってないものでしょうか?」(原文ママ)
引き続き読者さまからのお悩みにお答えしていきます。今回は前回のお悩み相談と少しだけ似ていますが、カメラと撮影状況が違います。
まずはシャッタースピード優先の、優先具合を設定する。
質問者さまからのお写真は非公開なので、参考までに筆者の写真ですが、このような状況です。
(1)猫を止めたい(2)写真は明るくしたい(3)でも背景もボカしたい!この3つですが、(1)の猫を止めたい!から見ていきましょう。
まずは、シャッター優先モードにする場合、「遊んでいる猫が止まるおおよそのシャッタースピード」というものがあります。撮影状況や使用レンズ、手ぶれ補正の有無にもよりますが、手持ち撮影の大まかな目安としては以下の通りです。
・眠っている猫の場合=~1/100(手ぶれしなければOK)
・座っている猫が片手で少しじゃれている場合=1/100~1/500
・両足で立ちあがり飛び上がるくらいじゃれている場合=1/500~1/1000
動きのある被写体の場合はシャッタースピードが3桁無いとぶれてしまう、と意識すると良いですね。数字に幅があるのは大人猫がじゃれている場合と仔猫がじゃれている場合など猫の状態や動きによって幅が生じる為です。
1/100で止まらなければ1/250に。1/250で止まらなければ1/500に、といった具合に調整して適切なシャッタースピードを設定しましょう。猫の動きは予測出来ない事が多いので、出来るだけはやめのシャッタースピードに設定した方が良いですね。
これで猫はピタリと止まります。でも背景はボケていませんね。ここがジレンマです。
次は、写真を明るくしたい!!
質問者さまは「シャッター優先モード」で撮影されているので露出補正を使って写真を明るくされていると思われます。
露出補正を使う際、ISOをオートでない設定にしている場合は、陽が入る昼間でも800以上、そして暗い室内であれば出来るだけ高いISOに設定しましょう。
シャッタースピードを固定している場合、カメラが設定出来るのは「絞り」と「ISO」です。オートの場合は自動で切り替わりますが、手動で設定する場合は、出来る限り大きな数字にしないと写真が明るくなりません。
また、撮影環境やレンズ、シャッタースピードの設定によっては、露出補正で明るく出来る限界があります。設定すれば必ず明るくなるという訳ではないのでご注意を……。明るい写真を撮影したい!ということであれば、昼間の太陽の光がたくさん入る環境での撮影をおすすめします。(暗い場所や室内、夜間撮影でのプラスの露出補正は出来ない事もあります)。
最後に……やっぱり背景をボカしたい!!
シャッタースピード優先モードにすると動きを止める事は出来ますが、背景をボカす為の「絞り」設定はカメラが勝手に決めてしまいます。なので、撮影者の意図(ボカしたい!ボカしたくない!)を反映する事は出来ません。
しかし「明るいレンズ」と呼ばれる「F値の小さな数字のレンズ」をカメラに装着すれば不可能とも言えません。
シャッタースピードを先に設定する場合、カメラは「絞り」と「ISO」を自動で設定します。その時に「絞り=F値」を小さな数字にする事が出来なければ、明るい写真を撮る事も、背景をボカすことも出来ません。
質問者さまが今回使用されていたレンズは購入時にセットになっていた標準ズームレンズでした。このレンズは背景を大きくボカす事が出来ないレンズです。
最大にズームして、近寄って撮影するとボカすことも出来ますが、上記の写真のような大きく背景をボカした写真を撮影する事は出来ません。
「一眼レフカメラやミラーレスカメラを購入すると、自動で背景をボカした写真が撮れる!」もしくは、「その設定があるはず!」と思われるかたは非常に多いのですが、背景を大きくボカすのはカメラではなくレンズである事が多いです。この場合は「背景がぼかせるF値の小さなレンズ」を入手する事が必要なのです。
要するに……?
今回の質問のご返答ですが……
(1)猫を止めたい→適切なシャッタースピードを設定しましょう!
(2)写真は明るくしたい→ISOを大きな数字にしましょう!
(3)でも背景もボカしたい!→ボカせるレンズの購入を検討しましょう!
という結果になります。
一眼レフカメラやミラーレスカメラを使うと、とても綺麗な画質で写真撮影をする事が出来ますが、何でも出来る魔法の道具ではありません。
適切な設定と、撮りたいものや表現したいものに合わせたレンズを選ぶ事によって、初めて「撮りたかった写真」が撮れるカメラです。
カメラの「露出」と呼ばれる設定は「シャッタースピード」「絞り」「ISO」の3つから成り立っています。「この中の何を優先するか?」という事が非常に重要になります。撮りたいもの、表現したいものに合わせた設定を探していけると良いですね。
(写真は全て東京キャットガーディアンにて撮影いたしました)
次回予告
次回も引き続き読者の方からのご相談に回答する「猫じゃらしで遊ぶ猫が上手く撮れません!」です。具体的な写真の説明を交えてご紹介していきます。
著者プロフィール
桐島ナオ
写真と詩を組み合わせた物語写真を中心に発表している写真家。植物と猫とカフェが大好き。PhotoCafe写真教室の講師もしています。公式HPはこちらから。