こんにちは。写真家の桐島ナオです。この連載では、猫を一眼デジタルカメラで撮影する際のコツや撮影時の設定、レンズ選びなどを含めてご紹介します。今回のテーマは「いざ!撮影!!」の前にちょっと思い出してほしい「撮影時の猫との接し方」です。

「かわいいく撮って欲しいにゃん」

いきなり撮ろうとしていませんか?

カメラ散歩中のかわいい猫との遭遇!初めての猫カフェでの撮影!テンションがあがります。だって猫好きだもの!!絶対シャッターチャンスは逃したくない!!さあ!すぐにカメラを構えて電源を入れてレンズを猫に向け…!!ていませんか?

カメラ撮影に慣れている猫ならまだしも、たいていの猫はカメラが好きではありません。一眼レフカメラやミラーレスカメラには大きなレンズがついています。大きな目玉にも見えるえたいのしれないものを向けられると猫は恐怖を感じます。まして、人見知りする猫や外猫だったらなおさらです。

「レンズにドキドキしちゃう時もあるにゃ…」

外猫の場合

外でのカメラ散歩中に猫に出会ったら、そのまま距離感を保ちましょう。猫が警戒して去るようだったら絶対に追いかけたりしないこと。逃げるようすが無いようだったら電源を入れたカメラを構えずに手に持ち、猫にゆっくり近づき、腰を下ろしましょう。猫から近づいてくるようだったらまずは猫の好きにさせます。体を寄せてきたりにおいをかいで来たら、自分の手のにおいをかがせたり身体を撫でてあげる等のコミュニケーションをとりましょう。

室内にいる猫の場合

猫カフェや室内の猫撮影の際も同様に、入室時にすぐにカメラを構えたりせず、まずは荷物を置いて猫にあいさつをしたり自分自身が落ち着く事が大切です。すぐに撮影したい衝動は分かりますが、猫に好かれるため、よい表情を向けてもらうためには「追いかけない」「無理強いしない」「積極的になりすぎない」ことが何より大切です。手に持ったカメラを猫が怖がらないようだったら、カメラを構え撮影開始!自分とカメラをこわくないもの、と分かってもらう事が信頼関係の第一歩です!

「イイ関係でいたいにゃん」

実際に猫に接してみました

今回、筆者が撮影をする際にお相手をしてくれたのは、東京キャットガーディアン大塚スカイシェルターの猫カフェにいる猫たち。保護猫の譲渡会場でもあるこのスカイシェルターは猫カフェにもなっているので、カフェ空間にいる子たちは基本的にカメラ慣れ・人慣れしています。それでも、「初めまして」のごあいさつは必要です。

「床でごろごろおくつろぎ中の所へお邪魔します…」

「カメラはまだ下げてますが、ノーファインダーでシャッターのみ切っています」

「すみません、取材よろしいでしょうか……」

「腰を下ろし暫くじっとしていても立ち上がる様子が無いので撫でてみました。シャッター音を怖がらないので、カメラは片手で持ちながら撮影開始です」

「リラックスしているのか撫でて欲しい所を差し出してきます!(たまりません!)」

「撮影側が興奮しないように注意しつつ……撫でる手も休めないで撮影します」

「すっかりリラックスしてくれました。さて、ここからが撮影スタートです!」

いかがでしょうか?「人を怖がらない子かどうか確認する」「びっくりさせないように腰を落としてコミュニケーションをする」「カメラを怖がらないか確認する」「シャッター音を怖がらないか確認する」。これらを行うことがとても重要なのです。

少し時間がかかるかもしれませんが、猫と接する上で猫の負担にならないよう、写真撮影が苦手な子に無理強いをしないことが基本になります。人間も猫も、気持ちよく写真撮影できる事が一番大切なのだと筆者は思います。

猫を撮影する際にしておきたいカメラ設定

さて。モデルさん(猫)の機嫌が乗ってるうちに撮影したいもの。いざ!!となって慌ててしまってシャッターチャンスを逃してはもったいないですね。あらかじめ設定しておくと便利な機能を紹介します。

■撮影前にカメラの電源はいれておきましょう

慌ててカメラをかばんから出して猫がびっくりしたり、電源を入れて戸惑っている間に猫がいなくなってしまわないように。猫を撮影する前にはカメラの電源は入れておくことをおすすめします。

「フラッシュなしのほうが自然な表情になるにゃん」

■オート・フラッシュはOFFにしましょう。

暗い場所や室内では、オートで撮影すると、フラッシュが自動で光ってしまうことがあります。猫を始め、動物は強い光に弱く目がくらんでしまうこともあります。必ずフラッシュは発光OFFにしましょう。(暗い場所で赤く光を照らすAF補助光もOFFにするとより良いと思います)。

「電子音が気になる子もいます。注意を引ける子もいますが、不快に思う子も……」

■操作音・デジタルカメラのシャッター音もOFFにしましょう。

ほとんどのカメラで、メニューなどの操作をすると音がするようになっています。シャッターを切った時にデジタル音がするようなものもあります。猫が注意をひいて表情を向けてくれる場合もありますが、何度も操作をしていると電子音を嫌がる猫もいます。

「むむ!エモノにゃ!」

「ニャーーー!!(強烈すぎて後光が差しました)」

「やったにゃ!!」

■動きのある写真を撮る際、初心者の方には「連写」がおススメです

連写と言っても、1秒間に何コマも撮影するものや、ワンショットの撮影を連続でシャッターを切るものまでさまざまです。動物の動きや表情は一瞬です。眠っている猫以外の撮影では、1枚ごとの撮影で液晶画面を確認せずに、何枚も続けてシャッターを押し続けることが良い表情を狙うコツになります。

動きの激しいものを撮るときは「連写モード+動体追従AF」でのシャッターボタンを押し続ける連射、そして、表情を追いかけるときは「ワンショットモード+シングルAF」でのシャッターボタンをその都度押す連射がおススメです。

「Nikon機はレンズ交換ボタンの近くにM・S・Cのスイッチがある機種もあります。その場合はCにして下さい」

においにも注意しよう

また、カメラ設定ではありませんが、香水をつけている人、たばこのにおいがついている人は猫に嫌がられる傾向にあります。どちらも刺激臭として猫が嫌がることが多いです。猫と触れ合いたいときは控えたほうが良いですね。(喫煙者のみ猫が抱かれるのを嫌がるケースがあります)。

「くさいのキライにゃ!」

相手の気持ちになってお互い気持ちよく写真を撮ること

猫の良い表情を写真に収めるには「猫に好かれること」が何よりも大切です。猫が「写真を撮られることは、不愉快な気持ちになること」と思わないような、撮影スタイルを心がけることで猫にとっての負担も少なくなり、撮影にお付き合いしてくれます。

いきなりカメラを向けないことや、撮影モデルを強要しないことは、写真嫌いな猫にならないためにもとても大事なことです。特に新しいカメラや大きいカメラやレンズを購入した際はすぐに撮影したい気持ちになりますが、神経質な猫にとっては、未知の物体を「自分にとって害のないもの」と理解するまで時間がかかってしまうもの。

ゆっくりとあせらずに時間をかけてあげれば、猫はリラックスして自然な表情やポーズをとってくれます。野良猫でも飼い猫でも猫カフェでも、写真撮影が猫のストレスにならないようにしたいですね。

「まったり中をそのまま撮れる幸せ…。猫も人も幸せです」

(写真は全て東京キャットガーディアンにて撮影致しました)

次回予告

次回は、猫撮影に向いているレンズの紹介です。

著者プロフィール

桐島ナオ
写真と詩を組み合わせた物語写真を中心に発表している写真家。植物と猫とカフェが大好き。PhotoCafe写真教室の講師もしています。公式HPはこちらから。

*桐島ナオ主催の保護猫カフェ月イチ撮影会 ネコサツ!*はこちらから。