東京・葛飾の名門ボクシングジムの名物ネコ親子
WBC世界フライ級王者・内藤大助をはじめ、数々の日本王者や新人王を輩出してきた東京・葛飾の宮田ボクシングジム。このジムに、巷でも話題となっているネコの親子がいると聞いて、早速訪ねてみることにした。
「家賃滞納のまま住み着いている」とも「このジムのオーナーである」とも言われているこちらの名物ネコは、白ネコのヒロくん。ヒロくんのママ、チャトラン(ヒロくんの兄弟)も一緒に暮らしている。
3匹のネコたちと宮田ボクシングジムとの出会いは、ある冬の寒い日のこと。雪がちらつく中、真っ白なネコがジムの中に迷い込んできた。このネコは近所でも知られたノラ猫で、よく見るとお腹が大きく膨らんでいたので、ジムのスタッフが「ここで産ませてあげよう」と入れてあげた。お母さんネコは4匹の子ネコを産み、2匹はもらわれ、2匹はジムに残った。ヒロくんとチャトランと名付けられた子ネコは、お母さんネコと一緒にジムに住み着き、現在は宮田ボクシングジム会長の宮田さんに溺愛される毎日だ。
ネコのヒロくんが練習生を厳しく指導!
ボクシングジムというと、黙々と行う厳しい練習に鬼コーチ…を想像していたのだが、明るいオレンジ色で外観が飾られた宮田ボクシングジムの扉を開けると、練習生とコーチのジョークや笑い声が飛び交い、リング正面の折りたたみ椅子には、貫録の姿で鎮座するネコのヒロくんの姿。なんとも和やかな雰囲気に驚かされてしまった。
「ボクシングジムの中には、練習中は私語厳禁というようなところもありますが、うちは明るいことが一番の特徴」と宮田会長。それでも、「練習は厳しいですよ。サボらないようにヒロくんが見張っていますから」とのこと。ヒロくんは練習生の間を堂々と歩き、サンドバッグをながめ、縄跳びを見守り、時にはレフェリーを買って出てリングにあがることも!
練習生のメニューは、レベルによってそれぞれ異なるが、縄跳び、シャドウボクシング、サンドバッグと、迫力の練習を行いながらも、みなその表情は晴れやかだ。宮田ボクシングジムには、プロ選手のほか、プロを目指す選手、趣味で続ける一般の人や小中学生など、さまざまな人が通っている。
驚くべき発汗量のボクシングは、痩せたい女性に人気
平日の夜になると、宮田ボクシングジムは仕事帰りの女性でいっぱいになる。聞けば所属する練習生300人のうち、100人は女性とのこと。ダイエットやストレス発散のリフレッシュに効果が高いと女性の人気が高く、中には、ジムに来て1日で1kg減った人、4カ月で20kg減った人も。平均すると、過去400人以上の人がジム入会後に6.2kgは瘠せたという。
これだけの驚異的な効果の理由は、ボクシングが全身を使った有酸素運動であることと、長く続けられる環境。宮田ボクシングジムでは、一人一人その人にあったメニューを指導してくれるので、まったくの初心者でも安心だが、だらけようとすると、「あと1分がんばれ!」とコーチの厳しい声が飛んでくるので、「ダイエット挫折経験のある人でも、ここなら痩せられる」という。
練習の最初に行う縄跳びは、腸が上下によく動くため便秘解消に効果があり、パンチを打つ動作は、背中の筋肉を直接刺激するため、驚くほど発汗する。全体を通して、練習は有酸素運動であるためダイエット効果が高い。
では、ここで、実際に少しだけボクシングの基本を体験させてもらうことに……。グローブをはめて、いざ、鏡の前に。教えてくれたのは、若い女性の先生。「こんなかわいらしい女性がボクシングを?」と思っていたら、デモンストレーションしてくれたサンドバッグのパンチはほれぼれするほど強く、美しい。
「足を肩幅に開いて……リズムをつけて、ワン、ツー!」。基本は難しくないようにみえるが、鏡に映る姿はぎこちなさでいっぱい…。それでも、パンチをするときに、腕だけでなく、脚に力を入れ、ウエストもひねるので、たった30秒で、汗がじんわり出てきて「これは効く」と実感。ふと気付くと、ネコのヒロくんはリングの正面の特等席から、じーっと練習生を見張っている。コーチの励ましの声とヒロくんの視線に支えられていれば、たしかに上達しそうだ。
ヒロくんのママとチャトランが寝そべる傍らには、なんと、チャンピオンベルトが。「みなさんに応援していただいて獲ったチャンピオンベルトですから、みなさんの手の届くところに置いているんです」と宮田会長。下町のボクシングジムは、人とネコの温かさに包まれていた。