猫ブームをリードする話題の猫ちゃんたちに逢いたい! そんな有名猫ちゃんたちを訪ねる旅がはじまった……。前回は、ブログ「ふくとごま」で話題となり、単行本も出版した「小さなタレ目猫」めめちゃんの、仮死状態での奇跡の誕生をお伝えした。今回は、めめちゃんが生まれる前のお話、そしてめめちゃんのママとおじさんのお話をしよう。
「ドラえもんのような猫」ふくちゃん
めめちゃんは遊び好きだ。ボールでもネコジャラシでも、こちらがもう勘弁と言いたくなるまで飽きることがない。若いこともあるが、これがエキゾチック種の特徴でもあるらしい。そんなめめちゃんと遊んでいると、どこからともなくいかにも貫録のあるクリームの耳折れ猫が現れた。「なんだ? なんだ? 」といわんばかりの堂々の迫力である。hanaさんが「ドラえもんのような猫」というふくちゃんだ。なるほど、ドラえもんみたいに耳がない。実はふくちゃん、スコティッシュフォールドという猫。この種類にも耳折れと立ち耳と2種類あるそうだが、ふくちゃんは見事な耳折れ猫だ。じゃれつくめめちゃんを物ともせず、我が道をゆく。
hanaさんの飼い猫は、そもそもがこのふくちゃんだった。大学生の頃、後輩からもらった猫を飼ったことがあったが、結局は親任せになってしまった。自立したらその時は自分で猫を飼おう……。hanaさんの夢は、2005年に実現した。ネット掲示板で情報を得て出会ったスコティッシュフォールドの男の子。3兄弟の中で1匹だけが耳折れ猫だった。やってくるまでは、「コタツ」という名に決めていたが、生後2カ月でやってきた猫を見たら、hanaさんの口から自然に出たのが「ふーちゃん」という名前。以来、ふーちゃん、ふくちゃんと呼ばれるようになる。ワクチン接種で目が腫れあがり、ひどいご面相だったが、hanaさんは誰が何と言おうと世界一の美猫と、有頂天だった。
今でこそすっかりオジサン体型のふくちゃんだが、写真で見ると確かに赤ちゃんのころの可愛さはなかなかのものだ。後にめめちゃんを世に出すことになるブログも、実はそんなふくちゃんの日記として2005年にスタートした。ふくちゃんがhanaさんのもとにやってくる前々日から記事は始まっている。当然ながら、当時の主役はふくちゃん、記事はことごとくふくちゃんのことで埋め尽くされていた。振り返れば、hanaさんと桜子さんの愛情を独り占めしていた、ふくちゃん至福の時代であったのだ。
ふくちゃんを襲った突然の病
だが、1歳になる少し前、hanaさんはふくちゃんの異変に気づく。キャットタワーに登らなくなったり、遊ぶのを面倒がったり、便もしたがらなくなった。驚いて病院で診断すると、思いも寄らぬ結果が出た。スコティッシュフォールド特有の先天性の関節炎だったのだ。すでに全身の関節に異状が見られた。動くと痛いから、ふくちゃんは動こうとしなかなかったのだ。ショックだったが、1歳半を過ぎれば痛みは消えるらしい。hanaさんは、気を持ち直して、病気と上手に付き合っていこうと考える。実際、ふくちゃんは少しずつ調子を取り戻して、少しずつ普通の生活ができるようになっていった。
ふくちゃんを見ていると、キャットタワーにも登るし、ふつうに動き回っている。今では、一見しただけでは関節が悪いとは気づかない。ゆっくりと床を歩いてきたふくちゃんが、部屋の片隅にある水場にひょいと飛び上がった。蛇口に近づいて、前足を差し出して水栓をひねるようなポーズ。水を出しての催促だという。そばにいた桜子さんが、蛇口を少し開いて水をポタポタと垂らしてあげる。すると、ふくちゃんは器用にペロペロと水を直接舐めて飲む。これは、ふくちゃんだけの特技だ。餌場に用意された水よりも、こうして飲む水がお気に入りだという。
関節炎の痛みをこらえてストレスがたまるふくちゃんを見ていて、hanaさんが思いついたことがあった。友だちの猫が訪ねてきたとき、ふくちゃんがとっても楽しそうだったのだ。猫同士でグルーミングすると、マッサージ効果もあることも聞いたhanaさんは、ふくちゃんのために妹猫を飼おうと思った。でも、体力に差があるとかえってふくちゃんのストレスになる。飼うなら、おとなしいゆったりとした猫がいい。そう調べていくうちにペルシャ猫に行き当たる。でも、長毛より短毛がいい。こうして選ばれたのが、短毛のペルシャ猫であるエキゾチックだったのである。
そしてごまちゃんがやってきた
2006年7月、ごまちゃんがやってきた。ふくちゃんと合うか、心配だったhanaさんはとりあえず試しに連れてきてみたのだ。生後3カ月、まだ仔猫ということもあり、ゆったりというわけにはいかぬものの、ふくちゃんとごまちゃんはすぐ仲好しになった。そのままごまちゃんはふくちゃんの妹になる。ブログのタイトルも現在の「ふくとごま」に変わった。話を伺っているとおや? hanaさんの仕事場から、恐る恐るごまちゃんが顔を出した。めめママだけあって、顔や三毛猫模様がめめちゃんにそっくりだが、体が一回り大きい。
「ごまは、とっても用心深いの」とhanaさん。お客様が来たときは、姿を隠して姿も見せないことがあるそうだ。突然の来訪者に、めめちゃんもふくちゃんもすっかり気を許しているのを陰から見て、ごまちゃんも出て行って大丈夫と思ってくれたのだろうか。用心深くこちらを伺いながら、遠巻きに見ている。めめちゃんを見る眼差しが、なんともお母さんらしい。
ふくちゃんのことを考えた末に選んだエキゾチックだったが、ごまちゃんと暮らしはじめて、hanaさんはすっかり惚れこんでしまった。相手に気を配るやさしくあたたかい性格。ごまちゃんのおかげで、ふくちゃんも目に見えて元気になっていった。こんなごまちゃんの血を引いた子どもたちに会いたい。いつしかhanaさんは、そう思い始める。ごまちゃんに子どもを産ませよう、hanaさんは決心した。デルピエロ君と結婚したごまちゃんは、3匹の子どもたちを授かったが、2匹は生まれてすぐ虹の橋を渡っていった。そして、ごまちゃんそっくりのめめちゃんだけが残った。
ふくとごま、そしてめめ
こうして、3匹の生活が始まった。ふくちゃんは、血のつながりはないがめめちゃんにとってはおじさんだ。体もいちばん大きいし、貫録もある。ふつうの猫なら嫌がる掃除機などの雑音にも動じない大物ぶり。ただし、超がつく天然ぶりには、誰もが唖然とするらしい。ごまちゃんは、やさしいママ。天真爛漫、知らない人にはつれないけれど、性格は最高、やさしさは天使のようだという。そして、めめちゃん。おっとりとして甘えん坊。誰からも愛される幸せ猫。
めめちゃんがやってくるまでには、こんな物語があったそうだ。もし、ふくちゃんが病気にならなかったら。もし、ふくちゃんのためにと貰ってきた猫がごまちゃんではなかったら……。私たちは、めめちゃんに会うことはなかったかもしれない。午後の陽射しがあふれる部屋で、3匹は思い思いの時間を過ごしている。じっと窓の外を見つめるふくちゃん。飽きることなくおもちゃに戯れるめめちゃん。そんな2匹を部屋の片隅から静かに見守るごまちゃん。猫がいる暮らしは、なんて平和なのだろう。(つづく)
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