サービススタートから3年が過ぎ、コード決済のPayPayとの連携強化も進んで好調のPayPayカード。dカードでプラチナカードを発行したNTTドコモや、Vポイントで積極的な取り込みを図る三井住友カードなど競合も積極的です。PayPayカードの現状について、同社の代表取締役社長・谷田智昭氏に話を聞きました。
PayPayカードは、もともと2015年にKCカード株式会社(現・Jトラストカード株式会社)のクレジット事業を継承したワイジェイカード株式会社としてスタートしました。同年3月にはソフトバンクカードの発行が開始され、同じく4月にはYahoo! JAPANカードも発行されています。21年10月にはPayPayカード株式会社へと社名が変更され、同年12月にPayPayカードの発行が開始されました。したがって同社のクレジットカード事業は2015年からはじまっていますが、PayPayカードとしてはちょうど3年になります。
谷田社長は、2023年に基幹システムをAWSに変更するという大きな改修を行った点が、オンプレミス環境からの移行として重要な取り組みだと言います。
PayPayカードは、PayPayと一体となってカード利用を増やすことを狙いとし、スピード感を加速するためにオンプレミスからクラウドへの移行を図ったといいます。これによってスケーラビリティや可用性を向上させ、内製化を押し進めるためにもクラウド化を図ったそうです。
「より速く、自らの手で開発して、機能創出やプロダクトの開発を爆速で行う体制を整えた」と谷田社長は話します。同社は当初ヤフーの子会社という位置づけでしたが、現在はPayPayグループとなり、開発はアプリ中心に移行。「ヤフーの経験も生かしながら、スピード、品質、開発力を上げていく」と谷田社長は意気込みます。
PayPayが起点になるというところが、PayPayカードの強みです。PayPayアプリでは「PayPay残高で支払う(赤い背景)」「PayPayカードで支払う(青い背景)」という2種類を切り替えて支払えるという体験に加え、PayPayアプリ上にカード用のミニアプリも用意したことで、PayPayユーザーとの関係性を強化している点が特徴です。
PayPayアプリ上で、PayPayカードの決済情報を即時確認できるため、いつものアプリでQRコード決済だけでなくクレジットカードの利用確認もできるという点が強み。PayPayポイントの付与予定数やPayPayのわりかん機能も使えるなど、PayPayとの統合が強化されていて、谷田社長もこの点が「PayPayグループの強み」だとアピールします。
加えて谷田社長は、「プラスチックカードとしての機能もキャッチアップする必要がある」として、Apple PayやGoogle Payへの対応を進め、「QRでもスマートフォンのタッチ決済でもプラスチックカードでも支払いができる」というトータルの体験を提供していく考えです。
PayPayカードの複数枚発行にも対応。このあたりは楽天カードなども力を入れているところですが、谷田社長は各国際ブランドごとに特徴があると指摘。複数ブランドを必要とするケースも存在するといいます。
個人的に思いつくパターンといえば、Mastercardは、日本の公共交通機関におけるタッチ乗車への対応が遅れており、その点はVisaやJCBの方が有利。他にも、一部加盟店でVisaやMastercardが使えなくなったとしても、JCBでなら決済できる場合があり、複数ブランドを保有するメリットはありそうです。
谷田社長は、利用者に個人事業主も多いことから、事業用途と家庭用途を分ける使い方もあると話します。支払口座も分けられるので、事業用途なら屋号を付けた銀行口座を引き落とし口座に設定するといった使い方もできるそうです。
PayPayカードの発行は4枚までですが、「まずは4枚までの発行でやってみる」(谷田社長)考え。カード裏面にカードの名称を書く欄を設けたり、PayPayアプリ上でカードの名称を設定できたり、使い勝手も工夫しているそうです。
そんなPayPayカードですが、「圧倒的にPayPay利用が多い」と谷田社長。どのような経路でPayPayカードを申し込んでも、PayPayアプリに連携するような設計にしており、カード申し込み完了時点でPayPayアプリに登録できるようにしているそうです。
PayPayでも登録するクレジットカードをPayPayカードにするよう、PayPayステップでPayPayカードを優遇。PayPayカードでの支払いもPayPayステップの対象とすることでカード利用を促しています。
結果として、「単独での利用よりも(PayPayとPayPayカードを)併用している人が圧倒的に多い」という状況だといいます。
PayPayカードをPayPayステップの対象としたことで、PayPay加盟店ではない店舗でも、クレジットカード対応であればPayPayカードの利用を促せる点もメリットです。オンラインサイトでもリアル店舗でも、PayPay加盟店ではない店舗も多いことから、PayPayカードとPayPayの両輪でグループのシナジーを高める考えです。
こうした取り組みで大きなのがモバイルとの連携。「ペイトク」は、ソフトバンクユーザーとPayPayの連携によってPayPayポイントを増量するなど、通信・金融を連携させたサービスとして訴求しています。通信と金融の連携は、ソフトバンク/PayPayに限らず、通信各社が力を入れている領域です。
PayPayカードにとって「ペイトク」は「堅調に推移している」(谷田社長)とのこと。「ペイトク」は、通信容量に応じて3プランがあります。データ無制限の「ペイトク無制限」だと、月額9,625円の料金に対してPayPayカード割で187円の値引きとなり、さらにPayPayカードでソフトバンク携帯料金を支払うことでPayPayポイントが還元されます。特にPayPayカード ゴールドでの支払いにすると10%のポイント還元になります。
さらに、PayPayに登録してPayPayクレジットで支払いをすると0.5%の特典が付与されるので、通常1.5%/最大2%のポイント還元になるというのもゴールドカードのメリットです。
このような「ペイトク」やPayPayとの組み合わせという通信・決済のグループ連携がPayPayカードの強みです。通信との連携部分は他社通信キャリアとの競争部分ですが、PayPayの強さが他社に対する優位性となるでしょう。
ちなみにPayPayカードを純粋にクレジットカードとしてみると、「まだdカードのプレゼンスには至っていない」と谷田社長も認めます。先行するdカードはプラチナカードを投入してさらなる利用拡大を目指していますが、PayPayカードではプラチナカードについて「現時点で決まったことはなく、まずはPayPayカード/PayPayカード ゴールドという現在ある商品のさらなる強化とその魅力を引き続き伝えていく」という考えです。
その一環として、PayPayカード ゴールドをワイモバイルの通信料金支払いに設定した際の還元率を、従来の最大3%から最大10%に変更して特典を強化しています。
さらに、PayPay銀行をPayPayの子会社化にすることで、PayPayグループとしてPayPay/PayPayカード/PayPay銀行の金融・決済サービスの融合がさらに強化されることが期待されます。来年、通信と金融・決済分野ではさらなる連携が強まりそうです。