大規模音楽フェスである「FUJI ROCK FESTIVAL」や「RISING SUN ROCK FESTIVAL」「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」では、グッズや飲食ブースでのキャッシュレス決済はすっかり一般的になっています。
2023年暮れに開催された「COUNTDOWN JAPAN 23/24」で、都市型フェスのキャッシュレス決済の現状を確認してきました。
若者が多い音楽フェスとQRコード決済の親和性
「COUNTDOWN JAPAN 23/24」は、千葉県・幕張メッセを会場に、2023年12月28日から年明けまで開催された都市型音楽フェスです。いわゆる「夏フェス」は屋外の広大な敷地を使って複数ステージを用意しているパターンが多いのですが、このイベントは幕張メッセの屋内で完結しています。
夏フェスだと、近隣の野球場であるZOZOマリンスタジアムなども使用する「SUMMER SONIC」が幕張メッセで開催されていますが、それよりは小規模ということになるでしょう。
そんな「COUNTDOWN JAPAN 23/24」ですが、会場となる幕張メッセはネットワーク環境がかなり整備されています。もともと年間を通してイベントの多い展示会場のため、携帯キャリア各社が力を入れて整備しているのです。
キャッシュレス決済において通信環境というのは生命線です。ユーザー側のスマホの通信を使うQRコード決済だけでなく、クレジットカードなどの読み取りを行う店舗のリーダーもネットワーク接続が必要です。
そのため、人が集中するフェスの現場ではネットワークの問題が大きく影響します。筆者は今年の夏フェスで「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」のネットワーク状況を取材しましたが、現地参加者の声を聞くと、「FUJI ROCK FESTIVAL」でも「RISING SUN ROCK FESTIVAL」でもネットワークの問題が発生していたようです。
その点、幕張メッセの回線は良好で、「COUNTDOWN JAPAN 23/24」で多くの来場客が詰めかけても快適……と思いきや、タイミングによっては不調になるキャリアもあったようです。
それでも、幕張メッセは長年の対策が奏功したのか、各社とも高速通信が可能な場面も多かった印象です。東京ビッグサイトでは同じタイミングでコミケが開催されており、そちらの現地参加の声を拾うと通信ができないキャリアもあったようですが、音楽フェスの場合はステージ終わりに人が一気に増えてステージが始まると減る、しかも複数のステージを観客が移動するという行動パターンになるため、めまぐるしく通信環境が変化する状況です。
KDDIでは、「COUNTDOWN JAPAN 23/24」向けに特別な基地局の増設はしなかったものの、ネットワークを随時監視して調整をするなどして、安定した通信環境の実現を目指していたそうです。また、KDDIは5G SAに対応していて、それがスループットの高速化に貢献していたようです。
気になったのは、ここでもNTTドコモでタイミングによってネットワークが不安定になることが、他社より多かったところでしょうか。とはいえ、これも場所を変えるか時間を変えると十分なパフォーマンスになっていました。
こうした環境下で、KDDIは「COUNTDOWN JAPAN 23/24」に協賛し、auブースを出展していました。KDDIはこのところ、音楽イベントなどに積極的に協賛しています。一昔前に同社がLISMOを展開してきた頃もそうでしたが、改めて力を入れていく考えのようです。
今回のKDDIブースは、撮影コーナーやゲームコーナーが設けられていてなかなか面白い取り組み。撮影ブースは「COUNTDOWN JAPAN 23/24」全体で各所に設置していたのですが、KDDIブースではスタッフが撮影してくれるので、仲間の誰かが撮影者として写らないことはなく、自撮りで構図がありきたりになってしまうこともないというメリットがあったようです。
こういったブースが設けられていることからもわかるとおり、「COUNTDOWN JAPAN 23/24」の来場者はかなり若い層なのだそうです。帰省などが必要になる年末の時期に開催されるフェスに参加できるのは若者中心になるということかもしれません。
今回KDDIでは協賛に当たり、物販や飲食でのau PAY決済対応も提供していました。決済は店頭のQRコードを読み取るMPM方式を採用。その他のクレジットカードなどのキャッシュレス決済は専用のリーダーが用意されていましたが、au PAYはMPMなので決済がユーザー側のスマホの電波に依存する形。いずれの方式でもネットワークの安定性が重要になりますが、幕張メッセのネットワークは比較的安定していたようです。
「COUNTDOWN JAPAN 23/24」は、前述のとおり「参加する年齢層が若い」という特徴がありますが、キャッシュレス決済においてもその影響があるといいます。それが、au PAYのチャージや決済の手段として、クレジットカードを登録していない利用者がそれなりにいるという点です。
これは若者に多いパターンです。まだクレジットカードを保有できない年齢層が多いということもありますし、収入が安定しないという面もあるでしょう。au PAYに限らず、複数のQRコード決済事業者が、セブン銀行ATMで現金で残高をチャージする若者が多いということを指摘しています。
このイベントでもそうしたユーザーが結構いるそうで、KDDIブースにはチャージコーナーが設けられており、現金でau PAYプリペイドカードを購入してその場でau PAYにチャージをできるようになっていました。取材中にも現金チャージを利用する人が訪れており、ニーズがあるのは間違いないようでした。
特に今回、au PAYで20倍還元のキャンペーンを実施していたことから、グッズを購入したい来場者には人気だったようです。通常はこうしたグッズに割引はないので、その点でも利用者が多かったのかもしれません。
とくに10代では、これまで現金に加えて交通系ICカードを使う例が多かったところ、最近はQRコード決済の利用が拡大しているようです。交通系ICと共通しているのは、現金でチャージができる前払式の支払手段であるという点。交通系ICに比べてチャージ残高も大きく確保できます。最近はマイナンバーカードがあるため、運転免許証がなくても手軽に身分証明書で本人確認ができるので、現金チャージも気軽にできます。
海外では若者のキャッシュレス決済手段としてBNPL(Buy Now, Pay Later:後払い)が人気となりましたが、現金チャージした分だけQRコード決済で支払うというやり方は、より堅実な日本らしい支払い手段と言えるでしょう。
若者が多く参加し、物販や飲食でキャッシュレス決済と親和性の高い音楽フェスなどのイベントは、「現金チャージの手段を用意する」ことが重要なのかもしれません。