スマートフォンを決済端末にする技術はいくつかあり、「Tap to Pay」などの名称で呼ばれますが、いずれにしてもスマホのNFCアンテナにクレジットカードなどをタッチしてそのまま支払いを行うというものです。
日本でもいくつかの事業者がサービスを展開していますが、mPOSのSquareがAndroidスマートフォンを決済端末にする「Tap to Pay on Android」を採用し、日本でも試用プログラムの提供を行っています。
今回、実際にSquareの「Tap to Pay on Android」を体験することができましたので、どのようなサービスなのか見てみたいと思います。
Androidスマホが決済端末に
「Tap to Pay on Android」の試用プログラムでは、申し込みをした加盟店が保有するAndroidスマホに、SquareのmPOSアプリをそのままインストールするだけ。インストールするアプリは、通常のものとはTap to Payに対応している点が異なるだけで、基本的には同じものだといいます。
mPOSアプリとして商品の登録などは従来通りで、決済時はレジとして金額を入力するなどして「Tap to Pay」ボタンを押すと、スマホのNFCがリーダーモードとして待ち受け状態になるので、クレジットカードのタッチ決済で支払いが行えます。
通常、NFCアンテナはスマホの背面にあるので、決済するにはどうにかスマホの裏面にタッチする必要があります。金額を入力したら、店員側がスマホをひっくり返して客に裏面を向けた方が使いやすいでしょう。タッチする場所にシールでも貼っておけばさらに親切ではないでしょうか。
Androidスマホでの決済は、Squareの決済端末でいうと「Squareターミナル」に近いのですが、それよりもさらに簡易なハンディ端末という感じで、Squareの端末のバリエーションが拡充されたと見ることもできるでしょう。従来、Squareリーダーを使えば似たようなことはできましたが、複数の従業員がそれぞれ決済端末を持ち歩けるという点で、Squareリーダーとは異なる使い方に対応できます。
タブレットを使ったSquareスタンドを母艦として、複数の店員がテーブル会計用にハンディ端末を持ち歩く、複数の運転手に持たせてバスやタクシーを運行させるといった使い方もできそうです。
「決済端末を新たに買わなくてもキャッシュレス対応できる」ということから当初は新興国向けの小規模な決済ソリューションとも見られていたTap to Payですが、Squareの場合は、加盟店のニーズに応えるバリエーションという位置づけで、初めてキャッシュレス対応する個店レベルだけでなく、それなりの規模の事業者でも展開できるとみています。
この仕組みでは通常のmPOSアプリを使っているので、Squareスタンドと接続するようなリーダー/キャッシャー/レシートプリンターなども同様に使えるため、拡張性もあります。
「Tap to Pay on Android」自体は、クレジットカードのタッチ決済のみの対応で、Suicaや楽天EdyをはじめとしたFeliCaを使った電子マネーには対応していません。同社としては「まずはリリースのスピードを重視した」と位置づけています。「試用プログラム」として加盟店を募集して試してもらい、ニーズや問題点の洗い出しをした上で、早期に本サービスに繋げていきたい考えです。
FeliCaへ対応するかどうかは現時点で明らかにされていませんが、Squareリーダーを併用するパターンはありえるでしょう。タッチ決済対応カードはすでにかなり普及しているので、日本人でも多くの人は使えるでしょうし、外国からの旅行客にも利用者は多いので、海外対応を重視して選択するという加盟店もあるかもしれません。
日本特有のソリューションとして、PayPayに対応している点は特徴のひとつです。すでにSquareのmPOSでは決済端末上にQRコードを表示し、それを利用客側がPayPayアプリで読み取って支払いをすることができます。「Tap to Pay on Android」の端末でも、アプリ自体はほぼ同じものなのでPayPay用QRコードを表示することができ、「クレジットカードのタッチ決済とPayPayに対応する」という形が実現できます。
利用できる支払手段がクレジットカードのタッチ決済だけでないため、比較的幅広いユーザーに対応できるでしょう。クレジットカードを持たない(持てない)若者でも、PayPayなら使えるという人もいるためです。
Squareとしては単に「手元の余ったスマホを決済端末にして安上がりにキャッシュレス対応」という考えではないようですが、加盟店側としてそのような意識で、「まずは気軽にキャッシュレス対応してみたい」というくらいの気持ちで選択するのもいいでしょう。
すでにSquareスタンドを使っていても、Tap to Payによりテーブル会計ができるようになれば便利な面もあるでしょうし、業務用スマホを支給していた会社でそのままそれを決済端末にすることで、出先での決済にも対応できます。これは、例えば顧客宅に訪問して作業する修繕業者などのプロフェッショナルサービス系で活用できそうです。
今回の「Tap to Pay on Android」は、試用プログラムの募集期間が6月16日までと短く、プログラム期間も7月24日までを一区切りとしており、その状況をまとめて本サービスにつなげるか検証するそうです。
どのような事業者が応募して、ニーズを解決できるソリューションとなるのか。Tap to Payはまだまだ国内では広がっていませんが、複数の事業者が試験サービスを含めて実施しています。
日本ではまだAppleがiOSのNFC機能を開放していないため、iPhoneでのTap to Payを提供できず、Androidスマホのみの対応となります。それでもニーズをカバーできるのかという点も気になるところ。Squareの取り組みがどのような結果になるのか注目です。