最初の緊急事態宣言から1年以上経過し、コロナ禍は「緊急」な事態から日常の当たり前となってしまいました。
残念なことに、「解雇」「雇い止め」見込み含め、コロナ禍の働き手への影響は10万人超(2021年4月現在:厚生労働省)、実質的に失業状態にある非正規雇用者が「女性103万人、男性43万人」に達する等(2021年2月調査:野村総合研究所)、深刻な事態が続く反面、ダメージが少ない業界では逆に過去最高益に達する企業が現れているのも事実です。
当面業績の回復が望めない企業で耐え忍ぶより、安全と言える企業や業界に向けて、人々が「雇用の民族大移動」を考えることが得策とも考えられる状況です。
今だからこそ見えてきたコロナ禍の勝ち組と負け組。今回は勝ち組企業の代表例と見極めるコツを解説しましょう。
業界全体より企業
注意したいのは、業界全体の業績や採用状況をマクロでみてもあまり意味がありません。飲食業と聞くと全部業績が悪い印象がありますが、日本マクドナルドは過去最高営業利益312億円です。テイクアウトやデリバリーが増えまとめ買いで単価が上がったからです。
では、同じようなテイクアウト可能で手頃な価格帯の牛丼3社の業績をみると、4月既存店売上高は前年同月比で、すき家14.2%増、松屋フーズ8.8%増、吉野家10.1%減、と明暗が分かれています。
移動制限によりホテル業界全体が沈む中で、アパホテルは経常利益が落ち込む中、黒字を出して一人勝ちなど、業界全体の業績が落ち込む中でも、企業別にみると、コロナ禍こそ、勝ち組がハッキリみえてくるのです。
コロナ前から、どんなシチュエーションで活用していたかを思い出す
コロナ禍が前提となる社会ではどんな企業が勝ち組になるか。確かにビジネスモデルは大事ですが、もっと簡単に見極めるコツがあります。そもそも、コロナに関係なく、どんな状況で活用していたかを素直に思い出してみましょう。
例を出します。外食のチェーンであれば、その場で食べたいのか、テイクアウト前提なのかを考えてみましょう。マクドナルドはドライブスルーのように、そもそもテイクアウトの割合は高いです。テイクアウトしても、こぼれにくいし、冷めてもレンチンで対応できます。
これがパスタだと、提供された時がおいしさのピークで、持ち帰ると麺がのびてしまい、レンチンしても元には戻りません。同様に発想すると、持ち運び中に汁がこぼれてしまう食べ物もテイクアウトするには時と場所を選びます。
つまり、近くで安全・安心に運べて、すぐ食べられる時でないとのびる・こぼれやすい系は厳しい。無理にテイクアウトするより冷凍食品やコンビニ弁当で職場や自宅でレンチンするほうがラクにおいしく、汚れず、安く食べられると利用者が判断するのは自然でしょう。
では、マクドナルドと近いサービスの企業はないか? とイメージしてみてください。ケンタッキー・フライド・チキンがあるでしょう。
実際、日本ケンタッキー・フライド・チキン(日本KFC)が2月10日に発表した「2021年3月期第3四半期決算」によると、売上高684億8,000万円(前年同期比12.5%増)、営業利益57億4,500万円(35.0%増)、経常利益46億9,100万円(3.1%増)と売り上げと売上高、営業利益は増収増益です。
このように、自分がどんなシチュエーションで活用していたかを考え、業績をのばしていそうな企業をみつけてインターネットなどで裏を取り、同じパターンが強みの企業がないか、と探してみると、意外と簡単に勝ち組企業は見つかります。
コロナ禍であれば何をしたいか自分の心に素直になるとみえてくる
もう一つの視点は、コロナ禍で「何をしたいか」、自分の心に素直になるとみえてきます。人込みを避けたい、運動不足も解消したいと考えれば、何が欲しいですか? 自転車はその筆頭に挙げられるでしょう。
実際、世界中で自転車人気が高まっています。ロックダウンで工場や部品の生産量が落ちたことも影響しますが、もともと生産量が少ない高級自転車に人気が集まっているようです。
シマノは2021年12月期通期の純利益は前期比25%増の796億円と過去最高益になりました。同社は世界有数の自転車部品メーカーで欧米では大人気です。
実は、私も昨年7月に約10万円の自転車を注文したら在庫は完売。納品まで約半年かかりました。現在の方がさらに注文が多く、納期までもっと時間がかかるケースも増えていて、注文が多いのに売るモノがないと自転車屋の店長は嘆いていました。同様に、ネットで買う割合も高まったでしょう。
またZOZOの連結売上高は、前期比17.4%増の1,474億200万円。営業利益は同58.3%増の441億4,400万円と儲かっています。ネットで買うだけでなく、ゲーム、漫画、映画の配信も楽しみたいでしょう。
ソニーグループは純利益が前年度比2倍の1兆1,717億円と過去最高益。去年の「プレイステーション5」の売り上げがよかったことに加え、『鬼滅の刃』(集英社)のアニメの著作権をソニーが持っていて映画化やグッズ販売で売り上げが増えたことが要因とのことです。
となると、鬼滅の次に爆発的に人気がでそうな作品は何か、どこがその権利を持っているかなど、調べることはもちろん、同作とコラボして成功した企業も、同じパターンを狙っていると想定すれば、勝ちが続く企業はメディアで取り上げられる前に確度の高い仮説としてみえてくるでしょう。
戦略とかビジネスモデルとか、難しいことを考える前に、素直に自分の心に寄り添って考えるだけで、コロナ禍でも元気で成長する企業や仕事は探せます。コロナ禍は緊急事態宣言も日常という前提になり、転職トレンドも変わりました。
コロナ禍が緊急事態という前提の連載は今回を最終回とし、次回から、新しい連載として、コロナ禍前提の中での企業や仕事の見極め方の続き、転職トレンドや考え方を解説します。