収束が見えないコロナ禍の中、企業経営も雇用も緊急事態宣言。じっと耐え忍んでいても、もう元の世の中には戻らないことは気付いているでしょう。
コロナ禍は「昭和の働き方や稼ぎ方」にトドメを刺し、変化のスピードを一気に加速させましたが、すべてが一斉にシフトしたわけではありません。車の時代になっても、当初は馬車も走っていたことと同じ現象が企業経営や働き方に起きています。
今回の連載は働き方や雇用で「今起きている未来」と言える変化の芽をとらえ、過去になった常識やノウハウを捨て、自分らしく活躍していくためのキャリアや働き方のコツを解説します。
転職先となる安全地帯は解け落ちた
緊急事態宣言下、海外の高級ブランド企業は昨対比で、過去見たこともないマイナスをどこも経験しました。ところが、宣言が解除された途端、一気に爆上げし、最終見通しを黒字の上方修正したブランドがあれば、苦戦したままのブランドがあったのです。
これはラグジュアリー業界だけではありません。自動車業界も同様。2021年の3月期予想をトヨタに続いて黒字予想の上方修正したメーカーもあれば、大幅な赤字予想のままの日産や三菱自動車など、明暗がはっきりしました。
また、サイゼリアが11年ぶりの34億円の赤字決算など、1年前までの勝ち組企業が一気に苦境に立たされているのが実情です。ましてや、サウジアラムコ、マイクロソフト、アップル等、経済基盤が大丈夫そうな大企業へ、誰もがすぐ転職できないことは言うまでもありません。
さらに、IT業界が発展するといっても、全ての職種の求人が増え続けているわけではありません。エンジニアでもピンポイント。データーサイエンティストといった「市場>求人」の職種は誰もが未経験でできる甘いものではありません。
ジョブ型が進むにつれて「エンジニア出身でリファラルや採用候補・企業ブランディングの実績ある人事担当」等、個別ピンポイントの求人要件に変化した1年でもありました。
転職できるのは、変化を起こして楽しめる人
その中でも一番変わったのは、企業が欲しがる人材像です。コロナ前までは、今のビジネスモデルを太くできるハイパフォーマーが人気でしたが、2020年人気がなくなりました。
代わりに求められるようになったのは「変化を起こして、新しい風」を吹き込める人材。なぜかというと、企業が業績をあげるには、「既存のビジネスを太くし、取りこぼしをなくす」「自社にとって新しいビジネスやイノベーションを起こす」、この2つが求められますが、コロナ禍では既存ビジネスを太くしにくい状況です。
わざわざ採用するより、既存の社員に取りこぼしを任せるようになったため、求人は激減しました。
成長軌道に乗らない限り、既存のビジネスを太くする人材を採用する必要はないのです。そして、新しいビジネスやイノベーションを起こす人材はマーケットでは少数派。
その結果、違う業界や職種の人材を採用する「越境転職」が増えました。飲食店に料理人はたくさんいても、SNSを使ったファンマーケティングをできる人はごく少数。採用するなら、料理人候補より、インスタのフォロワーが多い就活生の方が新しい風を吹き込んでくれる可能性が高まる、この感覚の転職が急増しました。
副業ではなく、本業を複数持つ時代
単に本業を変える転職ではなく、副業解禁した企業がコロナ禍で急増するに伴い、副業に留まらず、複数の本業を持つ人が現れました。サイボウズやユーザーベースのように、プロジェクトやテーマで稼働する日数や契約額を決めるケースはもちろんのこと、転職エージェントが「顧問派遣」を行ったり、ココナラのようにスキルシェアサービスが多数立ち上がったりし、実際に活用する人が多いに増えた1年でした。
会社が生涯を支えてはくれない。会社だけに収入を依存するのは危険なので、自分のスキルや経験でできることや、やりたいことを行い、複数の収入口を持つことで、人生の充実と生活基盤のリスク回避を行う働き方のニューノーマルが広がりはじまった1年でもありました。
そう、ドットコムバブルがはじけた時にGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が一気に成長したように、ピンチの時こそ、大きなチャンスが生まれることは歴史が教えてくれています。今年のピンチは実は大きな未来の可能性の種も生み出しているのも事実です。
2021年、アメリカ大統領も決まり、コロナ禍が続く中、転職市場や働き方がどう変わっていくのか、次回はその展望を解説します。