日産自動車の主力車種のひとつであり、2023年は国内だけで10万台以上を販売した小型車「ノート」が2023年12月にマイナーチェンジを実施した。ライバルの中でもモダンに感じるデザインがアップデートされたようだが、実際に見た感じはどうなのか。実車で確かめてみた。
ノートの歩みと現状をおさらい
初代ノートの発売は2005年。7年後にモデルチェンジして登場した2代目は、途中でシリーズ式ハイブリッドの「e-POWER」が追加となり、軽自動車を除く乗用車の年間ベストセラーに輝いたことで話題になった。
2020年12月に発売となった現行型は、これを受けてガソリン車を用意せず、e-POWERのみのラインアップに。そのノートが2023年12月にマイナーチェンジした。つまり、3年ぶりのアップデートということになる。
ところで、ノートシリーズには全幅をやや広げた3ナンバーボディに高級感を高めたインテリアを組み合わせた「ノートオーラ」という上級車種もある。こちらにはスポーティーなニスモ仕様も用意されているが、今回マイナーチェンジしたのは5ナンバーボディのノートだけだ。マイナーチェンジ前のノートに用意されていたオーテックおよびオーテッククロスオーバーは、追ってラインアップに加わるのかもしれない。
マイナーチェンジの枠を超えた大胆な変更
今回試乗したのはXの4WDで、日産のグローバル本社がある横浜周辺をドライブしたのだが、走りの前にデザインについて見ていきたいと思う。
スタイリングは事前に写真で確認していたのだが、実車を前にすると予想以上に大胆に変えてきたと思った。通常、マイナーチェンジでは、ボディパネル自体は不変で、グリルやパンバー、ランプ類程度しか手を入れることができないのだが、その範囲内でかなり大幅にデザインを変えている。
最新の日産フェイスに!
それとともに、ミニバンの「セレナ」や軽自動車の「ルークス」「デイズ」などと顔をそろえてきたことにも気づいた。具体的には、日産がこれまで使ってきた「Vモーション」グリルにランプを組み込んだ「デジタルVモーション」の採用だ。
同様の造形は、セレナのモデルチェンジで初採用(同車はデジタルVモーションという表現はしていないが)されたあと、ルークスとデイズのマイナーチェンジでも導入された。
なので、ノートに採用されるのは自然という考えもあるが、この顔はミニバンやハイトワゴンなど、背の高い車種専用だと思っていたので、ノートへの採用は驚いたし、ハッチバックのスマートなフォルムに違和感なく溶け込んでいて感心した。
グリルがボディ同色となったことも印象的だ。とりわけ、取材車両が新色のひとつでもある鮮やかな「ターコイズ」に「ダークメタルグレー」のルーフという2トーンだったこともあって、ひときわ目立つ。ボディ色の横バーはデジタルVモーションとラインを合わせてあって、近未来的な雰囲気だ。
このほか、太陽光の下では赤みを帯び、陰に入ると青が表現されるという「スミレ」も、ブラックルーフとの組み合わせで新たに加わっている。ボディカラーは全部で14通りだ。淡い紫の「オペラモーブ」など、個性的なカラーが多いという印象を受けた。
日産は「和モダン」の表現がうまいと再確認
従来はフロント下部とリア全体をブラックとしていたバンパーをボディ同色にしたことも特徴で、ブラックとなるのはフロントのインテーク部分だけになった。フロントは上質感、リアはボディの厚みが増した感じがした。
リアはそのままだと間延び感が出てしまうので、バンパーにアクセントを入れている。左右非対称というところが独創的だし、水平基調で両端を斜めにした直線は日本家屋を思わせて、和のテイストも感じられる。
16インチのホイールカバーにも個性的なグラフィックが施されている。こちらは水引をイメージしたそうだが、寄木細工を思わせる意匠にも思えた。しかもルーフと同じグレーなので、ボディにすっと溶け込んでいた。
インテリアはエクステリアほど大きく変わったという印象はない。そのなかでもっとも目立つのは、インパネ助手席側のデコラティブパネルだ。これまでのピアノブラックから、細いストライプ模様を幾何学的に配したタイプになった。
シートカラーは当初はブラックだけだったが、2022年の仕様向上でライトグレーが追加された。取材車もこの色だ。シートだけでなくインパネやセンターコンソールなどにも同じ色をあしらうことで、キャビンを明るい雰囲気にしている。
シートのファブリックは、従来はカジュアルなストライプをセンターに施していたが、今回はトーンの違う細いストライプを一面に並べており、少し大人っぽい雰囲気に仕上がっていた。
ノートはコストも重視されるコンパクトな量産車だ。しかも今回はマイナーチェンジであり、基本骨格に手は入れられない。そんな制約の中で、最新の日産のトレンドや伝統的な日本らしさを既存のボディに違和感なく融合させている。技ありのデザインだ。
モダンでありながら和のテイストを感じさせるというのは、かつての「ティアナ」や「ティーダ」を思わせる。個人的にはこの2台のデザインも評価していたし、ライバルではあまり見られないテイストなので、今後も日産のアイデンティティとして続けていっていいのではないかと考えている。