「缶詰の魅力は底なし。みなさんはまだその深淵を覗いてもいないのです」と、やって来るなり唐突に語り出す缶詰博士。一体どうしたんでしょうか。中二病ですか。
「例えばこれです。魅力はずばり、音」と、ポケットから取り出したのは小さな缶詰。表面には「大根漬」の文字が見えますが、これで音を楽しむって一体どういうことでしょう?
缶界が驚いた!
編集部のみんなが不思議に思うのも無理はない。しかしこの「割干し大根漬」の缶詰は、音を楽しむ缶詰なのであります。何の音かと申せば、かんだときの"ガリリ"という音なのであります。誇張ではなく、本当にガリリという音がする。缶界(缶詰業界)の常識からすると、実は大変なことなのだ。
田野町の干し大根
正確な商品名は「宮崎の焼酎に合う 割干し大根漬」という。宮崎の田野町というところで造られているが、田野町というのは干し大根の生産量が日本一と言われている。そのご自慢の大根を使っているということ。
写真に写りこんでいる透明のフタは缶詰に付属してくる。その用途は、文章を読み進むうちに判明するでありましょう。
海外へのお土産
この缶詰には意外な需要がある。空港の売店などに置いてあると、外国人観光客がこぞって買っていくという。
大根漬というのはつまり漬け物。漬け物はとってもおいしいんだけど、難点は匂いであります。例のおならチックな匂いが漏れ出ると、人からあらぬ誤解を受けてしまうんであります。しかし缶詰なら匂い漏れは絶対ナシ!
ということで、この缶詰には英語と中国語で書いた説明書も付属している。
醤油とお日様
これが割干し大根漬の内観。濃い醤油色に染まった割干し大根がぎっしりと詰まっている。その合間には細切りの昆布とにんじんも見える。
先ほどはおならチックなどと書いたが、この匂いはたまらなくいい。鮮烈な醤油の匂いと、お日様に当たってうまみが増した干し大根の匂いがする。
甘い醤油の誘惑
匂いをたっぷり堪能したところで、いよいよ口中へ。奥歯でかんだ刹那、ガリリっと小気味好い音がする。つまり固い。でもかめない固さではなくて、昔懐かしい本物のたくあんみたいな歯触りだ。
中はしっとりジューシーで、干し大根の汁と醤油が合わさったうま汁が飛び出してくる。しかも醤油は九州特有の、例の甘い醤油だ。
ああもう、このウマさはどげんかせんといかん。
歯応えがミラクル
で、話は冒頭に戻るが、透明のフタはこうして使う。一度に食べ切れないときにかぶせて、冷蔵庫へ入れておくんであります。とはいえ長く放置したら傷んでくるので、一週間を目途に食べ切るべし。
缶詰は殺菌のために高温で加熱している。ゆえに食材を柔らかくするのは得意だけど、固い食感を残すのはとても難しい。それなのにこの割干し大根漬は抜群の歯応えを残している。まさにミラクルな缶詰なのであります。
缶詰情報
道本食品/割干し大根漬 70g
価格330円(税込み)
同社オンラインショップなどで購入可