中途半端に残った野菜って、もやもやしませんか。まとめて炒めものにするとか、スープに入れちゃうとか、一応は考えるのですが、結局使わずにしなびてしまう。台所"あるある"のひとつですね。
「そんな時には缶詰です!」と、ドヤ顔でやってきたのは缶詰博士。この人は何でも缶詰に結び付けるので、もはや驚きはしません。「実は余り物と缶詰は相性がいいんですよ」と言うのですが、一体どういうことでしょう?
余ったという体(てい)で
豆腐が半丁余っているとします。一丁買ってきて、半分使ったあとの残りが冷蔵庫に入っているという状況であります。
「そんなの味噌汁にでも入れればいいじゃん」と思われるかもしれないが、ま、余ってることにしてください。
そしてまた、パセリも大量に余っているとします。
「パセリが大量に余るってどういう状況だよ」と思われるかもしれないが、ま、話の都合で余ってることにしてください。
そういう残り物を活用し、おいしい料理に仕立てるのが缶詰なのであります。豆腐、パセリという何のつながりもない両者を結び付けるのは、何とツナ缶なのであります。
放置プレーで
まずは豆腐の下ごしらえだ。木綿でも絹でもOKだけど、今回は絹。網の上にペーパータオルを敷き、豆腐を乗せ、上から皿を乗っけて重しとする。それを冷蔵庫に入れて30分以上水切りする。
何なら朝に重しをし、夜に取り出してもよし(半日放置)。水分がしっかり抜けるので、でき上がりが水っぽくならない。
生きてます
しなびかけたパセリは茎を落とし、ボウルに張った水に浸けておく。見た目は瀕死状態の野菜でも、ちゃんと生きている。だからたっぷり水を吸わせると、葉先がしゃきっと蘇る。そうしておいてから水気を切って、葉先を指でつまみ取っておく。
油もおいしい
さあ、満を持しての開缶であります。由比缶詰所は知る人ぞ知る、知らない人は知らない(当たり前だ)、絶品ツナ缶の造り手。そのフレークタイプの油漬がたまたま手元にあったと仮定してください(しつこくてすみません)。
ツナの油はオリーブ油、ひまわり油、大豆油などがあるが、このツナ缶は綿実油。コクがあるのに、飲み込んだあとはすっきりしている高級な油だ。この油も美味しいので余さず使う。ほかに必要なのはすりゴマ(黒)であります。
あとは混ぜるだけ
ボウルに豆腐を入れて、なめらかになるまですり潰す。スプーンの尻を使えばあっという間だ。そこにパセリ、ツナ(油ごと)、黒ごまを投入して混ぜ合わせれば缶成!
栄養バランス良し
かくのごとし。いかにも健康に良さそうに見えるが、実際そうなんであります。ツナと豆腐は高タンパクで、パセリはカロテンやビタミン(B1、B2、C)が豊富。黒ごまはビタミンE、B群にカルシウム、鉄分もたっぷり入っております。
ひと口いただけば、ムース状の豆腐はツナのうまみが溶け込んでいて、黒ごまの香ばしさも加わっている。合間にしゃくしゃく顔を出すパセリは清涼そのもの。特有の強い香りもツナのおかげで和らいでいる。
この料理は、敬愛するエッセイスト・平松洋子さんの考案した「パセリの白和え」を応用したものであります。これが余り物で作れるなんて、何と素敵なことでありましょう。
缶詰情報
由比缶詰所/特選まぐろフレーク油漬(綿実油)90g
小売価格480円(3缶セット、税別)
同社直販サイトで購入可
黒川勇人/缶詰博士
昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。