サバ缶ブームのおかげで、メインのおかずが缶詰という日が増えました。いろんな味付けがあるから飽きないし、何といっても手間が掛からないのが嬉しい。平日の夜などは本当にありがたいです。
でも、缶詰博士によると「日本はまだまだ缶詰を使ってない。ヨーロッパの家庭では缶詰を活用して、もっと家事労働を減らしてますよ」とのこと。一体どういうことでしょう?
美食の国も夕飯はシンプル
ご飯を炊いて、味噌汁を作って、サラダを作って、ハンバーグを焼く。よくある夕飯の献立であります。しかしこれを作るのに、けっこうな時間と手間が掛かっている。
それに対して、先日聞いたフランス人の夕飯は、バゲットを切って缶詰のパテを塗る。カット野菜を盛りつける。チーズとソーセージを切って盛りつける。加熱調理は一切なしという、まことにシンプルな夕飯であります。
夫婦両方が働くのは先進国の常だ。だから、平日の夜にはできるだけ家事労働をしないほうがラクなのだ。そう考えると、日本人はちょっと頑張りすぎてると思う。
スペインのグルメ缶詰
ということで、本日は夕飯のメインにもなるスペイン製のグルメ缶詰を用意した。日本では売っていないものだけど、これでヨーロッパのシンプルな夕飯を再現してみたい。
塩タラはヨーロッパで広く食べられている保存食で、食べる前に水に浸け、塩抜きしつつ柔らかくする。赤ピーマンに詰めて煮込むのはスペインやポルトガルの伝統料理だ。
スローフード
赤ピーマンの一部に黒い焦げ目がある。これは赤ピーマンを一度直火で焼き、熱いうちに皮をむいた証拠であります。実にていねいな仕事を施されているのであります。
ぱかっと開けて手軽に食べられる缶詰なれど、その製造には手間がしっかり掛かっている。その意味では、缶詰はスローフードなのだ。
ピーマンの濃厚な匂い
かくのごとし。皿に盛りつけ、パセリを散らしただけではあるけど、これで立派なディナーであります。煮込んだピーマンの濃厚な匂いが漂い、思わず白ワインを開けたくなる。
タラは切り身
赤ピーマンの中には塩タラの切り身が入っていた。ペースト状で入ってると思っていたので、ちょっと意外。
ひと口いただくと、赤ピーマンがとろっとろに柔らかい。舌で簡単に押しつぶせるくらいだ。そして、中に入っている塩タラは逆にしっかりした歯触りがある。その対比がとてもいい。
ピーマンと塩タラのうまみが溶け込んだソースは濃厚、かつ素朴。塩タラだからしょっぱいかと思ったけど、かなり薄味であります。
この他にバゲットを切って、カット野菜でサラダでも作れば、それだけでしっかりした夕飯になる(加熱調理なし!)。こんな風にいろんな缶詰を活用して、平日の夕飯をできるだけラクにしたいもんであります。
黒川勇人/缶詰博士
昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。