さえぎる物のない大空。どこまでも続く牧草地に白樺の林。やっぱり北海道っていいなあと思うのは、もちろんNHKの朝ドラ「なつぞら」の影響です。主題歌を聞いて癒やされていると、「あれは十勝が舞台。十勝といえば豚丼です」と博士が無粋にカットイン。もう、この人はどれだけ食いしん坊なのでしょう。
「あの十勝の豚丼を手軽に味わえる缶詰があるんです。僕も初めて食べます」という博士の手元には確かに缶詰が。んんー、悔しいけど興味あります。
きっかけは豚丼
先日、取材で十勝に行ってきた。もちろん朝ドラの影響を受けて、と言いたいところだけど、そうではなかった。豚や牛、アスパラガスなどの食材を取材しに行ったのだ。広大な十勝平野は農産物が豊富で、それを活用した加工食品(十勝チーズとか)も見逃せない。
取材のきっかけになったのは十勝豚丼であります。僕は正直言うと牛丼より豚丼のほうがだんぜん好き。なので、きちんと発祥の地・十勝の帯広で豚丼を食べてきた。で、取材最終日にお土産を探していたら、ちゃんと豚丼の素みたいな缶詰があったのだ。それがこのランチョ・エルパソ「どこでも豚丼風」であります。
湯せんすべし
さあ、本日も元気にご唱和をお願いします。開缶!
あらかじめ湯せんで温めておいたので、フタを開けたとたんにたまらない匂いが拡散。甘辛い砂糖醤油の匂いと豚肉の匂いの、ゴールデンタッグである。
缶詰は湯せんで温めるのが最良だ。小鍋に湯を沸かし、沸騰したら火を止める(ここ大事!)。そこに開缶前の缶詰をぽちゃんと入れて、3〜5分放置すればよし。沸いたあとの湯の余熱だけで、中心部までしっかり温まる。湯から引き上げた缶詰はかなり熱いので、やけどしないように注意されたし。
脂身にうっとり
本場の豚丼とは違う、かなり分厚い切り身がころころ入っていた。試しに1片を箸上げしてみると、この有様。なんと魅惑的な脂身でありましょう。とても柔らかいので、こうして持っているだけでも重力で脂身は千切れそうになる。ほかに、赤身部分も3〜4片入っていた。
砂糖醤油が決め手
かくのごとし。レンチンしたご飯に豚肉を全量Onしてグリーンピースを散らし、缶汁をしゃばばっと掛ければ十勝豚丼の缶成!
本場の豚丼と違うのは、肉が厚切りになっていることと、タレ(缶汁)の粘度が低くしゃばしゃばなこと。しかしこれは缶詰の製法上、しかたのないことだ。粘度の高い缶汁にすると、加熱によって固まってしまうだろう。そのあたりを推測しつつ、ついでに十勝の大地を思い出しつつ、ひと口。
むっ、砂糖醤油の甘辛味がMaxやばいです。脂身の入った豚肉はとろとろで、その脂自体が美味しい。一方の赤身はしっかり煮締まって、もくもくした歯応えだ。これは脂身がもっと欲しくなるなァ。
それにしても再認識したのは、砂糖醤油のパワー。十勝豚丼の味付けは基本的に砂糖と醤油である。りんご果汁なんか入れないし、にんにくも入れないし、生姜すら入れない。これは地元産の豚肉が圧倒的に美味しく臭みもないから、余計な風味を付けたくないのだ。その結果、素朴な甘辛しょうゆ味が最高においしいのであります。
缶詰情報
ランチョ・エルパソ/どこでも豚丼風(170g)
希望小売価格518円(税込み)
同社直販サイトで購入可
黒川勇人/缶詰博士
昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。