「白ワインの季節です。なので白ワインに合う缶詰にします今回は!」と、なぜか倒置法で迫ってきた缶詰博士。確かに最近は蒸し暑い日が続いているので、きりっと冷やした白ワインはおいしそう。
でも、缶詰って何となく白ワインより赤ワインに合うようなイメージがありました。はたしてどんな缶詰が登場するのでしょうか?
地名も大事
食べ物の面白いところは、名前の前に地名を付けると印象ががらっと変わること。たとえば「仙台長なす」と聞くとすごくおいしそうだけど、「仙台アスパラ」と聞くとまったく期待できない。しかしこれが「北海道アスパラ」なら、いかにもみずみずしくておいしそう。
そんな文脈でいくと本日の缶詰はヤバい。その名も「四万十の鮎 ガーリックオイル煮」であります。
日本最後の清流とたたえられる高知の四万十川。その名を冠した鮎とくれば、いかにもウマそうじゃないですか。
製法はアヒージョ
さあ、本日も元気にご唱和をお願いします。開缶!
ひと口大の筒切りになった鮎さんがころころと入っております。しかしその上を大量の薄切りにんにくが覆っております。さらに真っ赤な唐辛子が丸ごと1本、長々と横たわっております。
これはつまり、鮎のアヒージョですね。にんにくの香ばしい匂いがどんと広がり、赤唐辛子周辺のオイルは赤く染まっている。それだけでモーレツに食欲をかきたててくる。
佇まいが美しい
鮎さんを缶から取り出してみると、その佇まいの美しさに目を奪われる。背は上品なグレーで、優美なグラデーションを描きつつ、腹の白い部分が輝いている。白といっても、よく見ると淡い桃色をしている。
鮎は川魚の女王なのだ。その美しさをそこなわないよう、丁寧に手詰めされたのだと思う。
女王はワイルドだった
かくのごとし。バゲットにトマト、ルッコラを重ね、その上に鮎さんをOn。そうして頬張ってみれば、Oh。上品に見えた鮎さんが、思いのほかワイルドであります。にんにくの香りと唐辛子の辛みがしっかりと染みていて、塩気もきちんと利かせてある。
この女王は見た目と違い、なかなかの暴れん坊だったのであります。
なので、いつもより厚めに切ったバゲットでちょうどいい。合わせる白ワインも、樽香強めのしっかりテイストのものがいい。
1缶950円とセレブリティなお値段だけど、こうして1切れずつバゲットに乗せれば5〜6コのピンチョスができる。そうして友人と分けあって食べれば、元は充分取れますぞ!
缶詰情報
黒潮町缶詰製作所/四万十の鮎 ガーリックオイル煮(90g)
希望小売価格950円(税込み)
同社直販サイトで購入可
黒川勇人/缶詰博士
昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。