突然ですが"大和煮"って不思議じゃないですか? 缶詰にはあるけど、一般の料理では見たことがありません。
ひょっとしてこれは缶詰にしかない料理法なのかと思って缶詰博士に尋ねると「ふふふ、気付いてしまいましたね。大和煮は缶詰のために考案された料理なんです」と満面ドヤ顔。
「始まりは鴨肉で明治14年のこと。同21年には牛肉の大和煮も登場し……」(それから話が30分続いたので割愛)。
ということで、今回は知っているようで知らなかった大和煮のお話です。
当時は斬新だった
肉類を砂糖しょう油で甘辛く煮たのが大和煮という料理。明治14年(1881年)に東京の小石川で誕生した、鴨肉を砂糖しょう油とみりんで味付けした缶詰が最初となった。実は、それまでの缶詰は塩味か水煮がほとんどで、しょう油味は斬新だった。
そこで品名も珍しくしようと工夫して、日本らしさが分かる"大和煮"になったらしい。
そんないにしえの時代を想起させるのが、新潟県魚沼市のホリカフーズが造る「越後魚沼牛肉大和煮」缶詰だ。
デザインで買っちゃう
この缶詰はとくに佇まいが美しい。発売は1998年頃だけど、あえて大和煮が誕生した明治時代風にデザインされている。
食べ方の表記も漢字と片仮名の組み合わせで濁点なし。もし温めるなら「十五分時間熱湯ニ入置キ後チ管ヲ開クベシ」と書いてある。凝ってますなァ。
しょう油色に染まってます
表記通りに熱湯で温めたところで、本日もご唱和ください。開缶! (声に出してね)これこれ! 砂糖しょう油の匂いは世界最強じゃなかろうか。
しかもこの牛大和煮缶はしょう油のキャラクターを立たせている。試しに缶汁をなめてみると、甘さの中に香ばしいしょう油の風味がきりっと立っております。
こいつを熱々の白ごはんにOnすると……。
みんな大好き丼もの
かくのごとし。白ごはんに千切った大葉をしき、牛肉を乗せ、缶汁をたらっとタラしたところへバターも乗っければカロリーのK点越え! でもいいのだ。おいしいものに罪はないのだ。
冷めないうちに頂いてみると、牛肉はほろほろと崩れる赤身肉。合間に適度にサシも入っております。
そして、加熱した牛肉特有の臭みがほとんどない。これは嬉しいことだ。大葉とバターもいい仕事をしていて、三位が一体になったところはモー、やばいです。バターのミルキーな風味に大和煮の甘辛味が絡み、爽やかな大葉も参加して、モーたまらんです。
ということで白ごはん1合をぺろりと缶食。ああ、困ったものだ。
缶詰情報
ホリカフーズ/越後魚沼牛肉大和煮(160g) 希望小売価格680円(税込み)
同社直販のネットショップなどで購入可
黒川勇人/缶詰博士
昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。