ネット上で話題になっている「シーチキンコンビーフ」をご存じですか? シーチキンはツナ、つまりまぐろ。コンビーフは牛肉。その両方を混ぜた缶詰らしいのですが、魚と肉のミックスなんて、どんな味なのか想像もできません。
缶詰博士に味の感想を聞いてみると「シーチキンとコンビーフの味です」とそっけないお答えが。考えるより感じろ、という指導の一種でしょうか(たぶん違う)。
きっと気になっている方も多いと思いますので、博士にしっかり紹介してもらいましょう。
望みもあった
このあいだ声優の中村繪里子さんと番組でご一緒したのだが、そのときに面白い話を聞いた。彼女はコンビーフが大好きだそうだ。しかし好きなあまり、食べて減っていくのが悲しいという。
そこで思いついたのが増量という手段。何と、ツナ缶を増量剤としてコンビーフに混ぜるという。その割合は1対1。つまり倍に増やしてるわけだが、肝心の味は「とっても美味しいです!」とのことだった。
そんな切ない要望をメーカーが聞いていたのかどうか分からないが、昨年販売されたのが「シーチキンコンビーフ」というシロモノ。シーチキン(ツナ)とコンビーフを1対1で混ぜ合わせたまったく新しい缶詰だ。
2社がコラボ
外箱に書かれている原材料には、確かに「牛肉」「きはだまぐろ」と書かれている。全体をまとめるのは大豆油のようだ。
魚&肉という組み合わせも革新的だが、この缶詰がすごいのはそれだけではない。シーチキンを造るのは「はごろもフーズ」で、コンビーフを造るのは「国分グループ本社」。この異業態2社がタッグを組んで商品化したのであります。
この商品が発売された2018年は、両社ともキリのいい周年だった。はごろもフーズはシーチキン誕生60周年で、国分は自社ブランド「K&K」が商標登録110周年。そんなめでたいタイミングが重なったこともあり、両社で「今までにない面白い缶詰を一緒に造りましょう」となったわけだ。
両者が対等関係
さあ、本日もご唱和ください。開缶! 一見するとコンビーフに見えるが、色合いは赤みがちょっと薄い。じっくり見ると、コンビーフの繊維のあいまに白い魚肉が混ざり合っている。そして、全体からはちゃんとシーチキンとコンビーフの2つの匂いがしている。
どんな味かと申せば、シーチキンとコンビーフの味であります。そうとしか言えないのだ。2つの味が交互に現れ、それでいて喧嘩をせず共存している。混ざり合ってまったく違う味になってるかと予想したが、そうではないんであります。
配合割合が同じなので、企業間の合併で申せばあくまで対等合併。だから味も対等なのだ。
アレンジも可能
かくのごとし。シーチキンコンビーフ、略してシーコンでなめろうを作ってみた。青ねぎとしょうがをみじん切りにしてシーコンに混ぜこみ、丸めて大葉の上に置けば缶成! 薬味の爽やかさがまぐろにも牛肉にも調和して、これだけで立派な一品料理になった。
ありそうでなかった魚と肉の組み合わせが、こんなにも自然で美味しいとは思わなかった。中村繪里子さんもきっと満足していただけると思う。
缶詰情報
国分グループ本社(販売)/シーチキンコンビーフ
希望小売価格360円(税別)
全国のスーパーやネット通販などで購入可
黒川勇人/缶詰博士
昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。