世界にはいろんな缶詰があり、それぞれの国の食文化をよく表しているそうです。中にはとても珍しいものがあって、缶詰博士はそれを「珍缶」と呼んでいます。今回はそんな珍缶シリーズの第2弾、トルコの「サルマ」。トルコといえば世界三大料理の1カ国ですが、一体どんな料理なのでしょう?

隣人とは仲が悪い件

  • 直径約10センチ。牧歌的なデザインだ(写真:マイナビニュース)

    直径約10センチ。牧歌的なデザインだ

トルコとギリシアは隣国同士である。エーゲ海を囲んで手をつないでいるように見える。でも、とても仲が悪い。隣人同士は仲が悪いという、よくある話の典型であります。

ところが食文化にはそっくりな部分があって笑ってしまう。例えば、味付けごはんを柔らかいぶどうの葉で巻いた「サルマ」。これがギリシアにいくと「ドルマ」という名前に変わる(名前も似てる)。

そんなお勉強をしたあとで、トルコのサルマの缶詰を開けることにする。

トルコ人は几帳面説

  • 隙間なくきっちり!

    隙間なくきっちり!

さあ本日もご唱和ください、開缶! (声に出してね)。大人の親指くらいの大きさで、隙間ができないようにきちっと詰めてある。トルコ人は几帳面なのかもしれませぬ。

全体から酸っぱい匂いがするが、傷んでいるわけではない。サルマは酸味を利かせた味付けが多いのだ。トルコの料理店でこれを頼むと、レモン汁をたっぷりかけ、さらにレモンスライスも添えて出てくる。ギリシアに行ってもまったく同じものが出てくるので、やっぱり笑ってしまう。

酸味が沁みてます

  • 1缶200グラム入りで2~3人分

    1缶200グラム入りで2~3人分

かくのごとし。手前の1本を切ってみたが、米粒が入っているのがお判りだろうか。色が茶色っぽいのは、いろんなスパイスで味付けしたからだと思われる。

ひと口いただいてみると……ふむふむ。確かにサルマの味と香りであります。ぶどうの葉はとても柔らかく、筋のところまで食べられる。味はとくにない。

中のごはんは見た目通りにスパイシーで、辛くはない。オリーブオイルもふんだんに使われているのでしっとりしている。

しかしそれにしても、酸味が利いている。現地で食べたときはこれほど利いてなかったはずだ。これはきっと、缶詰ならではの現象でありましょう。すなわち密封され、時間が経っているので、酸味が全域に沁みわたったのであります。

お店にはあまり売られてないけど、ネットショッピングで買えるとこもある。日常から脱出し、気分だけでもイスタンブールに飛んで行きたい場合に有効な缶詰であります。

黒川勇人/缶詰博士

昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」Facebookファンページも公開中。