最近よく見かけるようになった"食塩不使用"の魚缶詰。原料表示を見ると「さば」「いわし」などの魚の名前だけが書いてあり、塩はもちろん他の調味料も書かれていません。つまりこれ、味がしない缶詰ということですか?
「結論からいえば、ちゃんと味がするし、おいしいです」と缶詰博士の黒川氏。味付けしていないのにおいしいなんて、一体どういうことですか?
塩は悪者ではない
この数年、「食塩不使用」のサバ缶やイワシ缶がじわじわ増えている。調べてみると、現在6社から10商品が発売されていた(ツナ缶の食塩不使用商品をのぞく)。
え? そんな缶詰に興味はないって? まあそう言わずに、お付き合いください。
ちなみに、健康のことを考えて減塩を心掛けている人も多いと思うけど、塩はけっして悪者じゃありません。
塩に含まれる主要なミネラル(カルシウム、カリウム、塩素、ナトリウム、マグネシウム)は、どれも人間が生きていくうえで欠かせない成分。健康を維持するために、適量の塩分は毎日摂取すべきであります。
自分好みに調整できる
とはいえ、心臓や腎臓の病気などで塩分摂取を制限されている人もいる。これらの食塩不使用缶詰は、そんな人たちが安心して食べられるわけだ。
え? 自分は健康だから関係ないって? まあそう言わずに、お付き合いください。
じつは食塩不使用缶詰には、もうひとつの魅力がある。それは自分好みの味に調整できるということ。
サバやイワシの水煮缶に含まれる塩分はもともと少ないけど(サバ水煮缶の場合100gあたり0.6g~1g前後)、例えば煮物の具に使った場合は、一緒に入れた調味料のせいで味が濃くなることがある。
一度濃くなった味はなかなか戻せないが、食塩不使用缶ならその心配がないわけだ。
イワシが持っている塩味
ということで、9月2日に発売されたマルハニチロの新商品「北海道のいわし水煮 食塩不使用」を開けてみた。この缶詰もイワシを水で煮ただけで、味付けは一切していない。さて、どんな缶詰なのか?
見た目は一般的なイワシ水煮缶と変わらず、匂いもやっぱり一般的なイワシ水煮缶と変わらない。
身をひと切れ食べてみる。最初に思うのは「無味!」ということ。しかしそしゃくが進むにつれ、イワシが本来持っているうま味がじわりと出てくる。
と同時に、ごくかすかな塩味も感じられる。そうなのだ、じつはこのイワシ缶には、100g当たり0.3~0.5gの塩分が含まれているのだ。
塩を加えていないのに、なぜなのか? それはイワシがもともと体内に持っていた塩分なのであります。
温めると脂の甘さが出てくる
かくのごとし。根菜とキノコをたっぷり加えた具だくさんのみそ汁にしてみた。このメニューはマルハニチロのサイトに載っていたオススメレシピを元にしたもので、アレンジとしてバターを加えてある。
汁をすすると、みそ味の合間に根菜のダシがあり、その後方にイワシのうまみが潜んでいる。前面には出てこない、後方での活躍であります。
イワシの身を食べると、温まったおかげで脂の甘さが出てきた。先ほど感じたかすかな塩味とうまみも健在で、それらが汁に溶け出すことなく存在している。臭みがないし、エグミもない。素材の良さがよく分かる。
え? オレは料理なんかしないから関係ないって? もうね、そういう人はしょう油でもぶっかけて食べちゃってください。
缶詰情報
マルハニチロ/北海道のいわし水煮 食塩不使用 150g 238円
全国のスーパー・コンビニやネットショップなどで購入可