缶詰博士の黒川氏によると、缶詰業界では技術的なブレークスルーが次々と起こっているそうです。今回紹介するパエリアの缶詰もそのひとつで、これまでにない革新的な技術が使われているそう。
「米の粒が立っていて、箸やフォークが抵抗なくすっと入る。こんなごはん缶詰は今までなかった!」
使命を帯びて生まれてきた
世の中にはいくつもの缶詰があるが、その中には使命を帯びて生まれてきたものがいる。
あるものは家事負担を減らすために。またあるものは酒のつまみのために(これも大事)。そして今回の「鰹と海鮮たっぷりの土佐流・玄米パエリア」は、高知県の米農家を応援するために生まれてきた。
消費量の減少や働き手の高齢化などで、米の生産者は減る一方であります。高知県も例外ではなく、とくに山間では耕作を放棄する農家が多いそうな。
そこで同県の「黒潮町缶詰製作所」は、地元の米を使った缶詰を造ることにした。農家の収入の一助とするほか、抜群においしいものが出来れば、米の魅力を再認識してもらえる。そのために約5年を掛けて開発したそうだ。
米はアルデンテ状態
フタを開けてまず思うのは、このパエリア缶は具が豊富ということ。カツオにイカ、ホタテ、パプリカが乗っていて、それぞれが大きく存在感がある。カツオを使っている点がいかにも高知らしい。
その下に見えるのは高知県産の玄米だ。玄米は白米と比べて食物繊維が約4倍、ビタミンB1が約8倍と栄養豊富。高温&高圧で加熱する缶詰に使っても、粒の形がしっかり保てる利点もある。
なので、今どきのごはん缶詰はほぼ玄米が使われているけど、この玄米パエリア缶はさらに先を行っている。米粒同士が固まっていないので、箸やフォークがすっと入るのだ。
詳しくは明かせないが、この缶詰は斬新な発想による技術革新が行われている。米粒自体も軽い歯応えのあるアルデンテ状態に仕上がっており、確かにパエリアらしい食感が味わえる。これはすごいことだ!
専用パエリア鍋も売ってます
この缶詰は常温のままでもおいしい。例えて言えば、お店のパエリアを持ち帰り、翌日に冷めたのをそのまま食べている感じだ。
イカと香味野菜を合わせて焼いたものが味のベースになっていて、その香ばしいソースが米に染みこんでいる。全体から香るのは焼いたイカの匂いとガーリックで、その中にセロリとサフランが上品に香る。香辛料のピリ辛もあり、メリハリのある味付けだ。
ちょっと面白いのは、この缶詰にぴったりの小型パエリア鍋が直販サイトで売られていること(1,000円也)。常温でもいいけど、この鍋に中身を移してアルミホイルをかぶせ、適宜温めるとよりおいしくなるという。
米の新たな魅力
かくのごとし。鍋底がちょっと焦げるまで加熱してからいただいた。
香味野菜と魚介の香りがぐんと立ち上がり、加熱で溶けた脂分が全体に回って表面に艶が出た。カツオやホタテも、中に染みこんだ香味野菜の風味がより際立ち、まことにウマいです。
総じて、このパエリア缶は何よりも米がウマい。缶詰によって米の新たな魅力が引き出せた気がする。
缶詰情報
黒潮町缶詰製作所/鰹と海鮮たっぷりの土佐流・玄米パエリア 182g 980円
同社の直販サイトなどで購入可