缶詰博士の黒川氏によると、缶詰の中には「食べることで旅気分が味わえる」ものがあるとか。それは例えば、外国の缶詰を食べれば、その国に行ったような気持ちになれるということですか?
「それだけじゃない! 旅というのは時間を飛び越える旅だってあるんです!」
えー、何だか面倒くさいです博士。分かりやすく説明してください。
開発したのは全日空
子どもの頃は嫌いだったのに、いつの間にか好きになっていた食べ物ってありますね。僕にとってイチジクがそう。庭に植わっていたイチジクは甘みが少なく、口に含むとざらざらした皮の感触が気持ち悪かった。
そこで祖母が皮をむいて、砂糖煮にしてくれたのだが、それはそれで甘すぎて気持ち悪かった。そんなイチジクが今では大好きなのだから、とても不思議。
で、今回紹介するのはイチジクのシラップ漬けの缶詰であります。開発したのは何と全日空(ANA)で、「旅する食卓」というブランドで売り出されている。
エチケット風のデザイン
品名に「THE CAN for WINE」とあるから、ワインのお供にぴったりということか。子どもの頃はイチジクにワインなんて想像もしなかったけど、今なら素直に「いいかも!」と思える。
パッケージは高級缶(感)があり、外箱の中の缶にも美しいラベルが巻いてある。それがワインのエチケット(ラベル)に思えて、ちょいといい缶じ。
胸の奥がきゅっとなる匂い
開缶して思わず声が出た。イチジクが大きく、かつ姿が美しい。皮はきれいにむかれていて、潰れたり割れたりしている実もない。きっとていねいに扱われているのだろうなァ。
どんな匂いがするのか鼻を寄せると……。胸の奥がきゅっとなった。かつて祖母が作ってくれた庭のイチジクの砂糖煮、あの匂いと同じなのだ。
何度もスンスンしてしまう。嫌いだったはずなのに、とても惹かれる。なぜー?!
ツブツブの食感もよし
かくのごとし。半分に切った実にゴーダチーズを合わせたら、いかにも白ワインに合いそうなアテになった。ゴーダチーズには缶のシラップをかけて、味の統一を目指しております。
ひと口いただくと、またまた胸の奥に来るものがある。シラップの甘さはしっかりあるが(糖度の高いヘビーシラップを使用)、イチジクの酸味がシラップと拮抗して、トータルではすっきりした甘酸っぱさになっている。
内部のツブツブの食感もよく、最後に鼻から抜ける香りがまことに爽やか。
で、食べている間ずっと、幼時に過ごしたアパートの庭の風景が思い浮かんだのだった。この缶詰は、僕にとって過去への旅でありました。
缶詰情報
ANAフーズ/THE CAN for WINE 香川県産いちじく 4缶4,968円(ANA公式ECサイト価格) 同ECサイトなどで購入可