いつまでも暖かいと思っていたら、急に寒さがやってきた今年の冬。ほかほかの炊き込みご飯が恋しくなってきました。
缶詰で作る炊き込みご飯は、味付けがとくに必要ないので実はファンが多いそうです。でも缶詰博士が推薦するのは、ちょっと珍しい「いちご煮」で作る炊き込みご飯。というか、いちご煮ってそもそも何ですか博士?
誤解を生むネーミングに怒っちゃいけん、実はロマンチックなんです
青森県八戸市には、有名な郷土料理「いちご煮」がある。いちごをコトコト煮込んだ料理、というのはもちろん冗談で、中身はウニとアワビの潮汁(うしおじる)であります。
「どうしてそんな誤解を生む名前を付けたんだ!」と憤慨した方、すみませぬ。もう少しお待ちいただければ、その由来は判明するのであります。
缶底に潜むウニ、アワビ
さあ、今日も元気にぱかっと開缶! ほの白い汁しか見えないが、これはもともと汁物の缶詰だからしょうがない。具は沈んでいるのであります。
でも、こうやって開けただけで磯の香りがふわっと立ち上がる。気温の低い冬でも匂うんだから、いかに濃厚に仕上がっているかが分かる。
本来の食し方
中身を鍋にあけて温める。磯の香りはさらに増幅されて、台所中がたまらん匂いで満たされる。そうして熱々にした汁をお椀に入れ、千切りの大葉をトッピングするとこうなる。
ウニが乳白色の汁から顔を出しているが、これがいちご煮の名の由来だ。八戸はよく霧が出るところで、足元に生えている野いちごが、霧の合間からこんな風に見える。
野いちごはフルーツのいちごと違い、赤ではなくオレンジ色。だからいちご煮と命名したという、なかなかロマンチックな由来なのであります。
このまま啜ると、気が遠くなるほど美味しい。だって、ウニとアワビの汁ですよ! こんだけうまみの濃い汁はそうそうありません。
バターがポイント
実は八戸の人にとってもいちご煮は高級料理。滅多に食べられないそうだ。本来はさっきの画像みたいに熱々の汁でいただくものだが、それはハレの日だけで、家で食べるときには炊き込みご飯にするらしい。
この缶詰はフルーツ缶と同じ大きさで、その中に汁が約400ml入っている。これが2合のお米を炊くのにちょうどいい。そのまま炊いても美味しいが、オススメなのはバターを加えて炊くこと。
すなわち、研いだお米2合といちご煮の汁だけを鍋(炊飯器)に入れて、バター10グラムをちょんと乗せて炊飯。ほかにきのこを入れるのもグーです。
炊き上がったら、残しておいた具(ウニとアワビ)を乗せて、じっくり蒸らせば出来上がり。
増量レシピでも激ウマ
汁のまま食べたらあっという間になくなってしまうが、炊き込みご飯にすればたくさん食べられる。つまりは増量のためのレシピであります。しかし、こうして出来上がった炊き込みご飯はウニ&アワビのうまみがいささかも薄れていない。それがご飯にしっとり染み込んで激ウマだ。
バターを加えたことで全体がややぱらっとして、ちょっとだけピラフ的な食感になる。バターのコクもほど良くて、いちご煮本来の味を邪魔してません。
缶たんなのがウリの缶詰炊き込みご飯だけど、たまにはこんな高級缶で作ってみてはいかがでしょ?
缶詰情報
味の加久の屋/元祖いちご煮(内容総量415グラム)
参考価格/1,468円(税込)
黒川勇人/缶詰博士
昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。