防災備蓄品として広く知られるようになったパンの缶詰。カビる心配がなく、食器がいらないので、被災地でとても役立つそうです。
「昔のパンの缶詰は不味かったけど、ある技術のおかげで激変したんです。それを町のパン屋さんが開発したというからすごい!」
そう語るのは缶詰博士の黒川氏。味を激変させたなんて、一体どんな技術なのでしょうか?
正しいけどパサパサ
初めて食べたパンの缶詰はアメリカ製だった。甘さも香りもちゃんとあったけど、食感は最悪。パッサパサで、口の中の水分がすべて持っていかれた。
今にして思えば、焼いたパンを缶に入れ、密封して高温加熱したのだろう。というのも、そのやり方が缶詰として正しいからだ。缶ごと熱で殺菌するから缶詰は長持ちする。しかし、そのせいでパンから水分が抜けてしまったわけだ。
そんな二律背反に立ち向かったのが、栃木県那須塩原市にある町のパン屋、パン・アキモトであります。
世界で特許取得
パン・アキモトの社長・秋元義彦氏がパンの缶詰を開発したのは、1995年の阪神淡路大震災がきっかけだった。被災地に送ったパン(2,000食分)の半分以上が傷んでいたと聞き、 「缶詰にすれば長持ちするのでは?」と考えたのであります。
そこで研究を始めたが、最初は失敗の連続だった。焼いたパンを缶に入れ、殺菌のために再加熱すると、どうしてもパンの食感が悪くなる。そんなパンはパン屋として認められない!
そこで秋元氏は発想を転換することにした。焼いたパンを使うのではなく、生のパン生地を使うとどうなるだろう? どうせ殺菌のために加熱するんだから、その熱を利用してパンを焼けばいいのでは?
その試みが成功だった。他にも、パンの水分をコントロールする特殊な紙を使うなど、いくつもの工夫を重ねた結果、しっとり柔らかいパンの缶詰が缶成!
その製法は日本、米国、中国、台湾の4カ国・地域で特許を取っております。
生地がくっつき合っている
パン・アキモトのパンは、手で裂くとしっとり感が良く分かる。引っ張るとまず抵抗があり、それからゆっくりと千切れていく。適度な水分を含んでいて、生地が密にくっつき合っているからだ。
今回開けたのはストロベリー味なので、引き裂いているとその甘い香りが部屋いっぱいに広がった。ストロベリーの量が予想以上に多くて嬉しい。うーん、いい香りだ!
パネトーネっぽい
引き裂いた一片を頬張ると、最初に感じるのはしっとりした舌触り。初めて食べる人は、これが缶入りだったとは絶対に思えないはずである。それほどしっとりしている。
外側は生地が厚くなっていて食べ応えがあり、内部は軽やかでふわふわ。全体の柔らかさといい、甘さといい、ちょっとイタリアの菓子パンのパネトーネに似ている。
そして、このおいしさが5年も持つというのも素晴らしい。
缶詰情報
パン・アキモト/PANCAN賞味期限5年シリーズ ブルーベリー味とストロベリー味 どちらも100g 参考価格500円前後
ショッピングサイトなどで入手可