カキの季節が到来。焼き、フライ、鍋と楽しみ方いろいろですが、注目すべきはその豊富な栄養素です。エネルギーを作り出す鉄分、免疫力を向上させる亜鉛、スタミナ源として知られるグリコーゲンなど、どれもビジネスパーソンに必須のものばかり。

まさに旬を迎えたカキですが、実は缶詰でも昔からの定番だとか。常温で持ち運べる便利なカキ缶を使ったキャンプごはんを、缶詰博士が紹介します。

  • 木の屋石巻水産「牡蠣の水煮」。料理素材としても秀逸

秘密基地

僕は昭和末期に子供時代を過ごした。町中に空き地や竹やぶがたくさんあった時代で、そういう場所に潜り込んで秘密基地を作るのが何より楽しかった。

狭くて暗いけど、なぜか心地良い空間。大人になった今、あれを再現できるのはテントだけである。だから僕はキャンプ好きなのであります。9月には家の中で妄想キャンプを行ったが、やはりちゃんと出掛けたくなって、ひとりいそいそと支度をした。

  • 開缶!カキの粒が大きい

缶汁も大事

持参したのは木の屋石巻水産「牡蠣の水煮」。この秋に発売された新商品で、宮城県で水揚げされたカキをごくわずかな塩だけで調理したもの。したがってカキ本来の風味がダイレクトに味わえるのだ。

フタを開けるとグリコーゲンたっぷりの匂いが立ち昇った。いや、グリコーゲンに匂いはないけれど、そんな雰囲気の匂いであります。缶汁はほの白く濁り、いかにもカキの成分が溶け込んでそう。これを使わない手はないだろう。

  • 食材はカキ缶と乾麺、青ねぎ

再度、登場

ソロ(ひとり)キャンプで大事なのは、ごはんに手間を掛けすぎないこと。ゆえに9月の妄想キャンプでも使った明星食品「鉄板焼きそば」に再度、ご登場いただいた。乾麺だから冷蔵する必要がないし、そのわりには安価なチルド麺よりずっと美味しい焼きそばなのだ。今回はカキ缶とタッグを組んでもらい、カキ焼きそばを作ることにした。

  • 湯に缶汁を加える

きちっとする時もある

深めのフライパンで湯を沸かす。1人分の焼きそばを作るには220mlの湯が必要だが、缶汁を足すなら減らさないといけない。そこで缶汁をビーカーに入れて計ってみると約60mlだった。すなわち湯を160ml沸かし、そこに缶汁全量を入れたのだった。

こんな細かいことをきちっとする時もたまにはある。人には見られたくない姿ですが。

  • 沸騰した湯で麺を茹でる

エキスが染み込む

缶汁入りの湯が沸いたら乾麺を入れ、ほぐしながら茹でる。カキと麺の匂いが混じり合い、テント周辺に拡散していく。

今まさにカキエキスが麺に染み込んでいるのだと思ったら、よだれが垂れそうになった。

  • メインのカキを乗せる

カキ半量でも充分

やがて汁気がなくなったのでカキを乗せた。1缶の半分でも充分な量である。あとは付属のソースを掛け、火を弱めてよく混ぜる。

ソースが焦げる匂いがたまらない。一瞬、しょう油が焦げる匂いとソースが焦げる匂いの「どっちが偉いか?」という疑問が浮かんだが、それはスルーしてよく混ぜることに集中した。

  • 青ねぎトッピング

カキと麺がまんべんなくソース色に染まったところで、付属のふりかけと、別に買った小口切り青ねぎ(九条ねぎ)をかけて缶成!

気温がどんどん下がっていく。焼きそばも加速度的に冷めていくので、急いで写真を撮ってからすすりこんだ。むっ。カキエキスの染みた焼きそばがウマい。ソースがよく絡んだとこもウマい。しかし一番ウマいのはカキである。ぷりぷりとジューシーで、崩れたところからグリコーゲン的なうまみがあふれ出てくる。

いや、グリコーゲンに味はないけれど、そんな雰囲気が濃厚なカキ焼きそばになりました。

缶詰情報
木の屋石巻水産/牡蠣の水煮(内容総量125グラム)
参考価格/560円(税込)

黒川勇人/缶詰博士

昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
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