缶詰博士の黒川氏によると、日本にはくん製文化がなかなか根付かないとか。
「キャンプで作ったり、おつまみで食べる文化はある。でも日常の食卓に滅多に上がらないのがもったいない!」
確かにくん製はおつまみのイメージが強いですが、ほかにどんな使い方があるのでしょうか?
昔からある定番ジャンル
缶詰の中にはいろんなジャンルがあり、その数は少しずつ増えている。
例えばアヒージョは今世紀に入ってから確立されたジャンルで、今ではほとんどのメーカーが製造している。ごく最近に登場したのは中華料理だ。まだ数社しか参入していないが、今後はもっと増えてくると思う。
そんなジャンルの中で、今回注目するのはくん製であります。昔からある定番商品で、主におつまみに使われてきたけど、実は普段の食事でもかなり使えるのだ。その活用法を髙木商店「焼き鯖の燻製塩オイル煮」で紹介したい。
他のくん製缶にない2つの特徴
焼き鯖の燻製塩オイル煮は、他のくん製缶にない2つの特徴を持っている。ひとつは原料で、脂が乗った極めて大きなサバしか使わない。ゆえに、そんなサバが入手できないときには製造できなくなる。
もう1つの特徴は、くん製塩とくん製オイルで製造していること。木をいぶして作る本来の製法を、あえて採用していないのだ。一体なぜか?
はがれたらもったいない
ちょいと横道に逸れるが、この缶詰はサバの皮を缶底に向けて詰めている。こうして中身を取りだし、上下を返すと初めて皮が現れる。
髙木商店のT氏によれば、皮を上にして詰めると、フタの内側に皮が貼りついて、開けたときにはがれてしまうという。
「皮っておいしいじゃないですか。はがれたらもったいないです」
おっしゃる通り! 素晴らしい気遣いであります。全体から立ち昇るのは、焼いたサバとくん香の香ばしい匂いだ。背身はうまみが濃く、腹身と皮は甘い脂を含んでいる。くすんだ風味がなく、すっきりした味だ。
濃いめの紅茶がよく合う
かくのごとし、その1。ライ麦パンなどと一緒に食べれば、気分はスカンジナビアンであります。このセットを外に持ち出して、焚き火のそばで食べたらもっとウマいだろうなァ。濃いめの紅茶がよく合いますぞ。
かくのごとし、その2。サバカレーに使えばくん製の風味が加わって、一段深いテイストになる。ウマし。
こうして加熱してもサバの身はしっとりジューシーなままである。その理由は、サバをいぶしていないから。
髙木商店のT氏によると、木をいぶす本来のくん製の場合、サバの脂分・水分が抜けてしまうという。その分うまみが濃くなるのは利点だが、ジューシーさは失われる。ゆえに、くん製塩とくん製オイルで製造しているそうな。
奥が深い話であります。
缶詰情報
髙木商店/焼き鯖の燻製塩 オイル煮 100g 参考価格486円(直販サイト)
同社直販サイトや食品店などで入手可