日本で初めて缶詰が造られたのは明治4年(1871年)のこと。以降さまざまな缶詰が登場してきましたが、中には「姿を消してしまった缶詰もある」と、缶詰博士の黒川氏は言います。

「海老の缶詰も一度、絶滅しました。それが近年になって復活しつつあるんです。その鍵となったのがアヒージョという調理法です!」

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  • 器(うつわ)/九州アヒージョ缶 熊本車えび 85g 950円 後ろは極洋・海老のアヒージョ

    器(うつわ)/九州アヒージョ缶 熊本車えび 85g 950円
    後ろは極洋・海老のアヒージョ

おいしいかどうかが問題

食材を缶に入れて空気を抜いて、密封してから加熱殺菌するのが缶詰だ。ゆえにどんな食材でも缶詰になるけれど、それがおいしいのか、そうでないのかが問題であります。

例えば生野菜のサラダを缶詰にしたら、どーなるか? 加熱によって野菜が煮えてしまうから、生ではなくなってしまう。

実は海老も難しい食材で、加熱後に時間が経つと身がぼそぼそになりがちだ。かつては三越などのブランドで海老の水煮缶が出ていたけど、2000年代初期には絶滅していた。

だが、しかし! 今日紹介する「九州アヒージョ缶 熊本車えび」は、紛うかたなき海老缶であります。それもグルメ垂涎の車海老を使っているのだ!

  • 九州アヒージョ缶・熊本車えびの外観と内観

    九州アヒージョ缶・熊本車えびの外観と内観

オイル煮で食感を保つ

常温で開缶すると、ひと口サイズの車海老がコロコロ入っていた。紅白の色も鮮やかで、身には厚みがある。

「こりゃあいい海老だゾ!」と顔を寄せると、とたんにガーリックの香ばしい匂いが鼻腔を刺激してきた。そうなのだ、これはアヒージョなのだ。たっぷりのガーリックと唐辛子を入れたオイルで煮る、スペイン伝統の調理法であります。

加熱後の時間経過で身がぼそぼそになりがちな海老も、こうしてオイルでじっくり煮ることでいい食感が保たれる。このアヒージョがあったればこそ、海老缶が復活したとも言えるのだ。

  • 車海老の様子。乗っているのは赤唐辛子

    車海老の様子。乗っているのは赤唐辛子

塩気はしっかり

車海老は弾力があって、わずかにムチムチした食感もある。身が厚いためか、噛んでいるとうま味がじわりとにじみ出てくる。

ほどほどにピリ辛で、塩気はしっかり。アヒージョはスペインの居酒屋「バル」で出てくるおつまみだから、塩気はしっかりしているのが正解であります。

よし、今夜はこの缶詰でバルごっこをしよう。

  • 冷たい白ワインといただく

    冷たい白ワインといただく

車海老らしい甘み

かくのごとし。カキーンと冷やした白ワインと全粒粉のパンを用意して、あらためていただく。車海老は茹でると甘みが強くなるので、このアヒージョも噛んでいるうちに甘みが出てくる。

ピリ辛の唐辛子も、その甘さを引き立てているようであります。そして、強めに利かせたガーリックが実にいい缶じ(感じ)。加熱したガーリックだからひたすらに香ばしく、生臭みはまったくない。

ちなみに、海老の缶詰は極洋とカルディからも出ている。どちらも商品名が「海老のアヒージョ」と、まったくの同名なのだ。アヒージョという調理法が海老に合っていることの証しであります。

缶詰情報
器(うつわ)/九州アヒージョ缶 熊本車えび 85g 950円
ショッピングサイト「ひむかの玉手箱」ほか、宮崎県のホテル「シェラトン・グランデ・オーシャンリゾート」内の自販機で販売中。