サケの中骨だけを集めたサケ中骨缶。ホロホロと崩れる食感が魅力ですが、誕生のきっかけは水産高校の調理実習だったと缶詰博士は言います。
「岩手県立宮古水産高校の先生と生徒が、それまで破棄していた骨を食用に出来ないかと、缶詰で水煮にしたのがきっかけです。SDGsの先例ですね!」
そんな伝統あるサケ中骨缶も、最近はバリエーションが増えてきたそうですよ。
誕生からずっと水煮
まるで陶器のように固そうなのに、噛めばあっけなく崩れる。かすかな塩味の中に潜む、意外なほどの脂っこさ……。サケ中骨缶の魅力について、漫画家・エッセイストの東海林さだおさんはそう語る。
サケ中骨缶はさまざまなメーカーが製造していて、今では10ブランド近く販売されている。でもそのほとんどが塩味、つまり水煮だ。最初に宮古水産高校で誕生した時から、ずっと味が変わらないのであります。
そんな状況の中で、最初に変化球を投じたのがホテイフーズだった。中骨を煮るのではなく、焼いてしまったのだ。
ホテイフーズは炭火焼き
ホテイフーズの「焼鮭中骨」を開けると、従来のサケ中骨缶では嗅いだことのない匂いが広がった。まるで焼き魚のような香ばしい匂いなのだ。それもそのはず、パッケージにはさりげなく「炭火焼」と書かれている。
同社のやきとり缶と同じく、炭火の直火焼きなのである。缶内の水分量も極めて少なく(底にわずかに入ってるくらい)、おかげで炭火焼きの香ばしさが失われていない。
味付けは塩味なので従来と同じだ。だが、炭火焼きという製法が新しいのであります。
ようするに煮付け
一方のマルハニチロ「さけ中骨煮付」はどうか。缶汁がたっぷり入っているのは従来のサケ中骨缶と同じだが、汁が茶色く、とろみがついている(水煮の缶汁はほぼ透明)。全体の匂いもショウガを利かせた煮魚のような匂いだ。
つまり、このサケ中骨缶は煮付け料理なのである。ありそうでなかった発想だ。
かくのごとし。さけ中骨煮付はチャーハンにしていただいた。チャーハンは最初にショウガとネギを炒めて作るが、この缶詰にもショウガが入っているので、材料がひとつ省けて楽だと思ったのだ。
缶汁で炒めたごはんは、煮魚の甘辛い味が染みててウマかった。合間に顔を出す中骨も、柔らかいごはんと対照的な食感で良かった。
かくのごとし。焼鮭中骨はシュクメルリにしていただいた。最初にオリーブオイルでニンニクと野菜を炒めて、牛乳と中骨を入れてから煮たのであります。
炭火焼きした香ばしい匂いは、牛乳で煮たあとも健在だ。ニンニクのパンチも加わって、ぐんぐん食欲が湧いてくる。中骨とはいえ肉もたっぷり付いているのが嬉しい。
おいしくてカルシウムが豊富、おまけに食資源の無駄が防げるサケ中骨缶。もっと活用しようではないか!
缶詰情報
ホテイフーズ/焼鮭中骨 65g 302円
マルハニチロ/さけ中骨煮付 150g オープン価格
通販サイトや一部のスーパーなどで入手可。