缶詰博士の黒川氏によると、日本には人道支援を目的に開発された缶詰があるそうです。貧困国に届けられるパンの缶詰や、災害時に心をいやすスイーツの缶詰など、支援の対象はさまざまだとか。
「ウクライナ問題も急務です。この缶詰は収益がウクライナ避難民の支援などに使われるし、中身は伝統的なウクライナ料理。ウクライナの食文化も分かるんですよ!」
フルコースが味わえる
ロシア軍がウクライナに侵攻してから、はや7ケ月。現地からの報道を見るたびに、胸が塞がれるような思いであります。
「苦境にいる人たちを支援したい!」そんな動きが日本の缶界(缶詰業界)でも始まっている。例えば、黒潮町缶詰製作所の「ウクライナ支援缶詰セット」は、その収益がウクライナ非難民の支援などに寄付される仕組みだ。
それだけでなく、このセットは料理としても秀逸。ウクライナの家庭料理が再現されていて、スープ、メイン、デザートの3品で構成されている。つまりウクライナ料理のフルコースが味わえるわけ。早速、1品ずつ紹介していこう。
具が豊富なスープ
フルコースの1品目はスープであります。そして、ウクライナのスープといえばボルシチであります。「えっ、あれはロシア料理じゃないの?」などと缶違いしてはいけない。ウクライナ発祥なのだ(と、偉そうに書いたが僕もロシア料理だと思ってた)。
このボルシチ缶は"食べるスープ"と言ってもいいくらい具が豊富だ。牛肉は高知県が誇る「土佐あか牛」を使っていて、しっかりした歯応えの赤身とジューシーなサシ(脂)が味わえる。缶詰の肉に特有の臭みがないのが見事。
野菜(キャベツ、人参、玉ねぎ、ビーツ等)は柔らかく、かつそれぞれの風味が生きている。全体的には塩味が控えめで、穏やかな味付けであります。
四万十ポークを使用
2品目(つまりメイン)は豚肉とジャガイモの料理で、その名も「シャシュリック」。ウクライナ風バーベキューで、アウトドアで食べるのにも良さそうだ。
豚肉は、これも高知県が誇る「四万十ポーク」を使っている。この連載の第214回「品名に惚れて買っちった!
四万十ポークとゴボウの甘辛煮」でも書いた通り、この豚肉は何よりも香ばしい匂いがいい。かめばうまみがぐんぐん湧き出るし、ジャガイモと玉ねぎもうまみを加えてくる。しっかりした塩気と黒コショウが利いたスパイシーな味付けだ。
異国情緒が満点
3品目のデザートは、ウクライナ風キャロットケーキ「モルコヴニツェ」であります。しっとりとしたベイクドケーキで、甘さは控えめ。シナモン、ナツメグ、クローブが利いた異国情緒満点のケーキで、僕はこれがいたく気に入った。
冷めても美味
この缶詰セットを考案したのは「高知工科大学」の商品部に所属する学生たちだ。レシピをウクライナ出身の同大学助教授コスチャンチン・オブシアンニコウ氏にお願いし、開発と製造は県内の黒潮町缶詰製作所が担当している。
学生たちの「自分たちにできることをしよう!」という強い思いから実現した、素晴らしいプロジェクトであります。
ところで、この記事の撮影ではボルシチ缶とシャシュリック缶を湯せんで温めてから撮っている。そのほうが色つやがいいし、食べてもおいしいからだ。
撮影が終わった頃にはすっかり冷めてしまったが、あえてそのまま食べたら、ちゃんと美味しかった。なので今度は野外に持ち出して、ピクニックや登山で食べようと思う。
缶詰情報
黒潮町缶詰製作所/ウクライナ支援缶詰セット 3缶 3,000円
ボルシチ195g、シャシュリック(ウクライナ風BBQ)85g、モルコヴニツェ(ウクライナ風キャロットケーキ)80g
同社オンラインショップなどで限定販売