缶詰博士の黒川氏によると、カキの缶詰に水煮タイプが増えたそうです。従来のカキ缶は燻製して油漬けになったものが大多数だったので「大きな変化だ!」と興奮気味に話します。そうなんですか、知らなかった。
「今年7月に出たカキ缶も水煮タイプで、驚くほど高品質。カキ特有の臭みがないんです!」
番屋の蒸しガキをイメージ
漁業の生産者(漁師)が、作業したり休憩したりする小屋を「番屋」というそうな。例えばカキの生産者は、水揚げのシーズンになるとカキを番屋で蒸して食べるそうな。獲れたての蒸したてだから、さぞウマいだろうなァ。
そんな番屋の蒸しガキの味をイメージして造られたのが、タイム缶詰の「番屋風蒸し牡蠣」だ。今年7月に発売されたばかりの新商品であります。
カキは殻ごと蒸す
開缶する前に目が留まったのは、ラベルに書いてある「湯せんで1~2分温めると磯の香りがより引き立ちます」という文言。確かに温めれば磯の香り(つまりカキの香り)が強まるが、それがいい匂いなら良し。でも、もし臭みがあったら台無しであります。
タイム缶詰はこれまでもカキ水煮缶を手掛けているが、この番屋風蒸し牡蠣で、初めてカキを殻ごと蒸すという工程を導入した。カキ缶は通常、カキのむき身を仕入れて使うのだ。
原料のカキはきっと鮮度抜群のはずだろうけど、殻ごと蒸したらさらに匂いが強まりそうに思える。過度な磯臭さが苦手な僕は、少々不安であります。
カキ、デカ!
湯せんで温めて開缶すると、この有様。カキがデカい! 聞けば3年物のカキだそうで、4粒みっちりと詰まっている。もっとも粒の数はカキの重量によって変わってくると思う。
気になっていた磯臭さだが、鼻を寄せてスンスンしても嫌な臭いはまったく感じない。それよりもカキのミルキーな匂いと、磯のいい匂いだけがしている。
よく見ると、カキの合間に細切りの柚子皮が入っていた。どうやらこの柚子皮も、いい仕事をしているようだ。
うまみが上品
かくのごとし。いつもなら香味野菜や香辛料を加えるところだが、今日は何もせずそのまま盛りつけた。素のままで味わいたいのだ。
デカい身を頬張ると、口の中がカキで一杯になった。ねっとりとした食感は缶詰ならではのもの。しかし貝柱の部分はモチモチと弾力がある。
おお、飲み込んだ後の、舌の上に残るうまみの上品なことよ。鼻から抜ける匂いにもカキのいい匂いしか残っていない。これまで食べたカキ水煮缶とは明らかにレベルが違う。ちなみに柚子皮の匂いはほとんど分からないから、脇役に徹しているようだ。
そして缶汁もヤバい。しっかりした塩気と、カキのエキスがたっぷり詰まっている。熱~くした清酒にちょいと垂らすと本当にヤバい。
そんなことをやってはいけませんよ。
缶詰情報
タイム缶詰/番屋風蒸し牡蠣 80g 864円
同社オンラインショップなどで購入可