「缶詰を見れば海洋環境の変化が分かる」と、缶詰博士の黒川氏は言います。原料の魚と産地で、日本の海がどう変わっているのか判断できるとか。
「例えば、これは北海道で作られたブリの缶詰。さあ、これで何が分かるでしょーか?」
んん、何でしょうね。おいしそうな缶詰だということは分かります!
北海道がブリの産地に
これは友人からいただいた北海道のお土産缶だ。函館は五島軒のオリジナル商品「道南産ブリのマリネ トマト仕立て」であります。
明治創業の老舗レストランの謹製だ。パスタにして食べようかな、きっと素晴らしい味だろうなと思ったが、同時に深く考えさせられることもあった。品名に「道南産ブリ」と書いてある。ああ、ついに北海道がブリの産地になってしまったのだ。
本来は温かい海域にいるはずのブリが、2000年頃から北海道でも獲れるようになった。2020年には何と、北海道がブリ類の漁獲量で全国1位になったという。
(このまま温暖化が進んだら、日本の海はどーなってしまうのか?)
懸念しつつも、獲れるようになった魚はきちんといただかねばなるまい。僕だって、この缶詰をきちんといただかねばなるまい。
匂いがプロ
さあ本日も参りますぞ、開缶! と、開けた瞬缶から立ち昇るプロの匂い。ガーリックが利いている。トマトの匂いが濃い。玉ねぎなどの香味野菜の匂いもある。間違いなくおいしい缶詰です、これ。缶詰博士の本能がそう告げている。
ゴロゴロ&大量
ブリをひとつ取り出すと、このサイズ。デカいです、とっても。それがゴロゴロと大量に入っている。その合間には、大きめカットの香味野菜もゴロゴロと大量に入っている。すなわち、この缶詰の要諦は「ゴロゴロ&大量」だ。誠に贅沢な仕立てであります。
香味野菜も絶品
かくのごとし。50gのパスタを茹でて、缶詰のソースで和えてから盛りつけた。やはりブリの切り身がデカく、主役としての存在缶(感)は満点。数量も8片と、数の面でも押し出してくる。
そのブリを頬張ると、柔らかいところと、引き締まって歯応えのあるところがある。かむたびに甘い脂と甘酸っぱいソースがにじみ出てくる。確かにマリネの味ではあるけど、お酢の酸味だけでなくトマトの酸味も利いているのがいい。
香味野菜のモロモロした粒も絶品で、玉ねぎの甘さやピーマンのほろ苦さ、コショウの辛味など、シンプルで分かりやすいんだけど、そのバランスが素晴らしい。
「さすがですぞー五島軒さん!」と、温暖化の問題をすっかり忘れて舌鼓を打ったのだった。
缶詰情報
五島軒/道南産ブリのマリネ トマト仕立て 170g 648円
同社のオンラインショップなどで入手可