缶詰博士・黒川氏が自信を持ってお勧めする「お弁当のメインになる缶詰」シリーズの第3段。今日は何と、うなぎ蒲焼きの缶詰だそうです。
「高知県のご当地缶詰で、最近は高級グルメ缶詰としてもよく紹介されてます。このサイズでうなぎ1本分が入っているらしいんだけど、ちょっと信じられないですよね」
その手に持っているパッケージは確かに小さいですが、それよりもうなぎ蒲焼きの缶詰自体が珍しいです。早く紹介してください!
清流・四万十川のうなぎ
藍染めの着物のような模様と、その中央に結ばれた赤い水引。まるで民芸品のような佇まいだが、これは缶詰の外箱であります。高知県の黒潮町缶詰製作所が造り出す「四万十うなぎ蒲焼き」缶が入っているのであります。
四万十うなぎというのは、清流・四万十川で採捕されたうなぎの稚魚を、四万十川主流域の地下水で育てたうなぎのこと。その鮮烈な天然水と特製のエサのおかげで、川魚特有の臭みがほとんどないそうな。
一般的なツナ缶と同じサイズ
箱を開けると、缶自体にも美しいステッカーが貼ってあった。さすが高級グルメ缶詰、拵え方も凝っている。
ところで、この缶のサイズは一般的なツナ缶と同じで、直径が約7cmだ。しかし黒潮町缶詰製作所のT氏によると、この中に四万十うなぎが1本分入っているという。本当だろうか? 本当だとしたら、一体どんな風に収まっているというのか?
まさかのタテ配列
開けてみるとかくのごとし。切り整えられた身が、まさかのタテ配列。
「いろんな詰め方を試しましたが、これが一番きちっと収まりました」とT氏はおっしゃる。よく見ると、中央には幅の広い部位があり、端には幅が狭い部位がある。丸い缶に合わせた工夫なのだ。
ちなみにT氏は子どもの頃、工作が得意だったという。「じゃあガンプラなんかも作りましたか?」と訊くと、「はい」とおっしゃる。
「でもプラモデルじゃなくてフルスクラッチで作っていました」
んん? フル……何ですと?
頭は出汁に使う
フル……のことはよく分からないので、ちょっと脇に置いといて。
身を缶から取り出して並べてみると、幅の広い部位と狭い部位があった。すなわち、頭と尻尾を除いた1本分が入っているわけだ。8切れ入っていたが、この数は原料のサイズや重さで変わるかもしれない。
ちなみに、頭の部分は白焼きにして出汁を取り、タレのベースに活用しているそうだ。希少なうなぎをムダにしたくないという思いが伝わってくる。
ふと思い付き倍増
かくのごとし。8切れを全部ごはんに敷き詰めた、超絶ゴージャスうな重弁当の缶成であります。
うなぎを頬張ると、腹の部分は脂が乗って柔らかく、背身のほうはほろほろと崩れていく。タレは醤油のきりっとした味が立っていて、甘さは控えめ。うなぎの風味が存分に味わえつつ、川魚特有の臭みはまったく感じない。
1切れのうなぎをちびちび食べたところで、ふと思い付き、別の弁当箱にごはんを詰めた。4切れのうなぎをそちらに移し、うな重弁当を倍増させた。もともと1缶が2,500円だから、倍増させたことにより1人分が1,250円に薄まったわけだ。我ながら実にいい仕事をした。
ところで、フル……のことはよく分からないままにしてあるので、興味のある人はググッてみてください。
缶詰情報
黒潮町缶詰製作所/四万十うなぎ蒲焼き 110g 2,500円
同社直販サイトなどで購入可