ワイン片手にほろ酔い気分の缶詰博士。おつまみは何とさば缶だそうです。
「味噌味と醤油味をいただいてますが、どちらもワインと相性ばっちり。というより、このさば缶自体がまるでシャトーものの赤ワインみたいです。むふー」
ちょっと何を言っているのか分かりませんが、恐らくそのさば缶の味わいが深いと言いたいのでしょう。一体どんなさば缶なのか教えてください!
希少な木桶仕込み
今回のさば缶は、八丁味噌味と醤油味であります。味付け自体は珍しくないけど、味噌と醤油の出自に特徴がある。どちらも木桶仕込みで造られているのだ。
かつては日本中の醸造所が、木桶を使って味噌や醤油を造っていた。使い込むうちに発酵を助ける菌類が繁殖して、その蔵特有の風味が出ると言われている。
それが今ではステンレスや繊維強化プラスチック(FRP)に置き換わり、木桶を使っているのは限られた醸造所だけになってしまった。それゆえ、この2種のさば缶も希少な存在と言えるのであります。
「木桶仕込み八丁味噌SABA缶」は、木桶仕込みの八丁味噌を使っている。「まるや八丁味噌」と「カクキュー」の2大ブランドをブレンドした贅沢版だ。
「木桶仕込み醤油&酢SABA缶」のほうは、埼玉県「弓削多(ゆげた)醤油」の木桶仕込み有機醤油に、福岡県「庄分酢(しょうぶんす)」の木桶仕込み酢を配合している。
赤だしのような色
木桶仕込み八丁味噌SABA缶を開けてみる。缶汁は赤茶色で、愛知名物「赤だし」を思わせる濃い色だ。その表面に浮いているのはさばの脂であります。
鼻先に持ってくると、匂いは一般的な味噌よりもずっと控えめ。八丁味噌は熟成期間が2年以上というから、その間に匂いもまろやかになったのだろうか。
小売業5社で共同開発
缶のラベルには「みんなの食プロジェクト」という表記がある。この2種の缶詰は、小売業5社(OONOYA、日本百貨店、自然食品F&F、こしき屋、信濃屋)がタッグを組んで開発したものなのだ。
そして缶詰製造を請け負ったのは、青魚の魔術師と言われる高木商店(僕が言ってるだけ)。一年の中で、最も脂が乗る時期の「寒さば」を使っております。
かくのごとし。木桶仕込み八丁味噌SABA缶を汁ごと皿に開けてみた。
寒さばは身が厚くて重量感がある。そこに絡んだ缶汁も量がたっぷりあって嬉しい。希少な八丁味噌を使っていると思えば、一滴も残さず摂取したい。
肝心のお味だが、ひと言で申せば全域フラット。塩味、酸味、甘味が並んで、突出した部分がないのだ。しかしその分、深い。上方ではなく下方に世界が広がっている感じであります。その味わいはボルドーのシャトーものの赤ワインのようで、分かりやすい甘味や酸味はないけど、複雑な旨味が口中でじわじわ広がってくる。
試しに赤ワインを合わせると、実にいい組み合わせになった。元々、さばの味噌煮は赤ワインとの相性がいいけど、この木桶で醸(かも)された八丁味噌はさらに好相性。食べては呑んでの無限ループが止まらない。おかげですっかり酔っ払い、木桶仕込み醤油&酢SABA缶のレポートが困難となり申した。相済みませぬ。
缶詰情報
ベストフード/木桶仕込み八丁味噌SABA缶 木桶仕込み醤油&酢SABA缶 どちらも190g 398円
信濃屋など一部の店舗やネットショッピングなどで購入可