2020年に、国際宇宙ステーション(ISS)で野口聡一宇宙飛行士がさば缶を食べたのを憶えていますか? しかもそのさば缶を製造したのが高校生だったということで、当時大きな話題になりました。
「あの宇宙に行ったさば缶が市販化されたんです。絶対に食べないと!」と、缶詰博士の黒川氏も興奮ぎみ。今回はその実食レポートです。
県内企業とコラボ
水産・農業系の高校で缶詰が造られていることは、この連載でも何度か紹介している。生徒たちが調理法やパッケージデザインを考えるのはもちろん、未利用魚を使って水産業の活性化を目指したり、厄介者の魚(藻場を荒らして海洋環境を変えるなど)を食べて活用するなど、実はすごいことをやっているのだ。
そんな「高校生缶詰」の中で、近年もっとも話題になったのは福井県立若狭高校の「サバ醤油味付け缶詰」だと思う。宇宙日本食に認められ、ISSで野口宇宙飛行士が実際に食べた、あのさば缶であります。
それが、同じ福井県の企業とコラボして、3月7日に「若狭宇宙鯖缶」として市販化された。一体どんな中身なのだろう?
宇宙日本食に認められた技術
さっそく開缶すると、まず目に付くのは缶汁が煮こごりのように固まっていること。これが宇宙日本食に認められた技術であります。
無重力環境だと、液体は飛び散るので、ISS内の精密機械などに付着する恐れがある。だから缶汁も粘度を高め、飛び散らないようにするのが必須なのだ。
14年もの歳月
缶汁の粘度を高めるには、寒天やコーンスターチなどを入れればいい。生徒たちもコーンスターチ、ゼラチン、葛粉(くずこ)の3種類を試して、葛粉がもっとも適しているのを突き止めた。さらに配合比率を変えて、粘度の強弱の微調整を何度も繰り返した。
ちなみに、彼らは高校生である。缶詰実習の他にも授業があるし、試験や部活もある。そして、3年経てば卒業なのだ。達成できなかった様々な課題は後輩が引き継ぎ、何と14年もの歳月を掛けてさば缶を缶成させたそうな。
郷愁を誘う味
かくのごとし。中身を皿に盛りつけると、缶汁が煮こごり状態になっているのが良く分かる。実はこの缶汁は、宇宙日本食に認められたさば缶よりも、とろみを控えてある。市販化にあたり、缶汁を機械で注入できる粘度にしたのだ。
味は、既存のさば缶と違って甘く濃い。無重力下では味覚が変化して、地上と同じ味付けだと薄く感じるという。だからこの味付けも宇宙仕様というわけ。
でもクドさはなく、普通のおかずとしてまったく違和感がない。甘めの味がちょっと郷愁を誘うようで、懐かしい味でもある。
缶詰情報
福井物産/若狭宇宙鯖缶 90g 756円
道の駅「若狭おばま」、観光施設「若狭フィッシャーマンズ・ワーフ」で購入可。いずれは福井県外でも販売予定