これまで世界52ケ国、1,500種類もの缶詰を食べてきたという缶詰博士・黒川勇人氏。きっとおいしいものや珍しいものがたくさんあったと思いますが、今では入手不可能になってしまったものも多いとか。
「面白い缶詰に限って、いなくなってしまうんです。くっ、残念……」と、悲しそうにうつむく博士。「いなくなる」ではなく「終売になる」が正しい表現だと思いますが、まあそこは放置して。面白い缶詰って、どんなものだったのでしょう?
細やかな気配り
米国製の「ヨダーズ」ベーコン缶詰は、今でも忘れられない。薄切りベーコンがぎっしり詰まっていて、重さは堂々の255g。香ばしく焼いてあるから、開ければそのまま食べられるのだ。ベーコン好きはたまらない1缶だった。
この缶詰は詰め方もユニークだ。ベーコンが互いにくっつかないように、1枚ずつ離してパラフィン紙に挟んであり、それをぐるぐる巻いた状態で缶に詰めている。おそらく手作業だから、大量生産はできないと思う。
ヨダーズはアメリカの食品会社で、このベーコン缶もアメリカのショッピングサイト(アマゾンなど)に出品されている。しかし、日本は海外からの畜産加工品を規制しているのと、数年前にその規制を厳格化したため、今では買うことができなくなった。実に残念であります。
丸ごと1匹入っている
カナダのプリンスエドワード島といえば、小説「赤毛のアン」の舞台になった場所。実は水産物が豊富に獲れるところで、とくにロブスター(オマールエビ)が絶品だそうな。
そのプリンスエドワード島から、かつて輸入されていたのがロブスター水煮缶だ。これは本当にすごい缶詰だった。何しろ、皮を剥いたロブスターが、丸ごと1匹詰まっているのだ。
塩気がしっかり利いており、身の食感はプリップリ。逆に、ハサミの先端部分はねっとりしていて肝のよう。部位によって食感も味も違うのが面白かった。
数年前までは日本でも売っていたのだ。まことに残念であります。
突っ込みどころ満載
日本の缶詰も負けてませんぞ。国分「缶つまスモーク」シリーズにかつて存在した「いかホルモン」は、珍缶中の珍缶だった。イカの内臓だけを集めてくん製し、油漬けにしてあるのだ。
なぜ、本体でなく内臓なのか? しかもなぜイカ? 突っ込みどころ満載のうえ、見た目が軽くグロい。だいたい、イカの内臓なんてちゃんと見たことがないので、どれが何なのか分からない。くるくるしていたり、シワシワしていたりするし、食感もプニプニねっとりと様々。
「女性にはとくに受けが悪かった」と国分の方がおっしゃっていたが、僕はけっこう好きだったなァ。本当に残念であります。