缶詰を開けたときのちょっとしたモヤモヤ……それは汁の始末。残さずいただいたほうがいいのか、それとも捨ててしまっていいのか。実は、缶詰によっては捨ててしまうともったいないものもあるんです。
例えば魚介缶の缶汁は、栄養成分の宝庫でもあるんです。今回はそんな缶汁を上手に活用する方法をご紹介します。脳の活性化に役立つと言われるDHAも豊富なので、頭をフルに働かせるビジネスパーソンにもオススメですよ!
青魚缶の脂は健康にいい
刺身で食べられるほど新鮮ないわしで造られるのが、この「木の屋いわし醤油味付」。原料はいわしのほかにしょうゆと砂糖だけ。なのに、この表面に浮かんだ分厚い脂の層は一体何?
実はこの脂はすべて、いわしが持っていた脂なのであります。いかに脂ののった魚体を使っているかがわかるし、青魚の脂だからDHAやEPAが豊富に含まれている。脳を活性化し、血管をしなやかに保って血管病を防ぐといわれている、健康にいい脂なのだ。
そんな脂が溶け込んだ缶汁だから、残さずいただけば魚の栄養を余すことなく摂取できる。ということで、まずは缶汁だけを湯飲み茶わんに移してみた。内容総量170gの缶詰で、汁はだいたい50~60mlくらい。
身のほうは白いご飯にのっけて、酢生姜や大葉、白髪ねぎなど好きな薬味をたっぷり散らせば「いわしのっけ丼」の缶成。わさびしょうゆをちょいと垂らすと美味です。
で、湯飲み茶わんに残った缶汁は、熱湯で倍に割り、刻みねぎ、炒りごま、爪の先ほどのバターを入れれば「いわしスープ」の出来上がり。驚くほどうまみが濃く、生臭さはまったく感じない。
缶汁の塩分が気になる方もいると思うけど、もともと缶詰は普通の料理よりも塩分含有量が低いことが多い。このいわし缶も、たっぷり2人分の量が入っていて、含まれている塩分相当量は約2.5gだ。1日の塩分摂取量の上限が6gといわれていることを思えば、缶汁まで摂取しても塩分の摂りすぎにはならないわけであります。
やきとり缶でもスープが出来る!
さて、同じ論法でいけばやきとり缶でもスープができることになる。
やきとり缶といえば、鶏肉と一緒にぷるぷるしたゼラチンが入っているから、あれを残さず湯飲み茶わんに移して、熱湯で割ればいいわけだ。その結果がどうなるかというと……。
かくのごとし。ぷるぷるしたゼラチンが溶け、こてっとした濃厚鶏スープになった。そこに浮かべるのはやはり刻みねぎと炒りごま。しかしバターは不要であります。なぜなら鶏のいい脂が出ているからであります。
ちょいといい焼き鳥屋さんに行くと、〆に鶏のスープが出てきますよね。あれと同等のスープがこんなに缶たんにできちゃうのだ。スープが絶品すぎて鶏肉を忘れそうになるくらいウマい(いいのか!?)。ぜひお試しあれ!
缶詰情報
木の屋いわし醤油味付/木の屋石巻水産
希望小売価格 税別342円
同社の直販サイトや一部の食品店などで購入可
やきとり塩味/ホテイフーズコーポレーション
希望小売価格 税別160円
全国のコンビニやスーパーなどで購入可
黒川勇人/缶詰博士
昭和41年福島県生まれ。公益社団法人・日本缶詰協会認定の「缶詰博士」。世界50カ国以上・数千缶を食している世界一の缶詰通。ひとりでも多くの人に缶詰の魅力を伝えたいと精力的に取材・執筆を行っている。テレビやラジオなどメディア出演多数。著書に「旬缶クッキング」(ビーナイス/春風亭昇太氏共著)、「缶詰博士が選ぶ!『レジェンド缶詰』究極の逸品36」(講談社+α新書)、「安い!早い!だけどとてつもなく旨い!缶たん料理100」(講談社)など多数。
公式ブログ「缶詰blog」とFacebookファンページも公開中。