幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。
第94回は俳優の反町隆史さんについて。現在『オールドルーキー』(TBS系)に出演中の反町さん。こちらの作品でコミカルな演技が新鮮であるとか、色々言われていますけど、それだけでは終わりません。おそらく、今の20~30代は知らないであろう、彼の魅力。昭和生まれの『ビーチボーイズ』(フジテレビ系・1997年)があれこれ語らせていただきます。
高身長の小麦肌でめちゃモテボーイズだったあの頃……
まず『オールドルーキー』のあらすじを。
現役プロ選手だった、新町亮太郎(綾野剛)は、戦力外通告を受けて引退をすることになってしまった。サッカーしか知らなかった人生、妻と子どもを抱えてどうすればと路頭に迷っているところ、スポーツ選手のマネジメント会社「ビクトリー」に採用が決まる。代理人ライセンス認定証も取得して、亮太郎の新しい人生が始まったところ、担当する水泳選手、麻生健次郎(渡辺翔太/SnowMan)のドーピング問題が発覚してしまう。
愛想があって、小回りの効く会社員の役、「綾野剛にここまで似合うとは……!」と唸ってしまった。気弱な綾野剛さんが最高なドラマなのである。少し前までサッカーボールを追っていただけとは思えないほど、会社に馴染んでいる亮太郎。30代後半という年齢もあって、先輩の年下社員の相談にものるという、良いパスを出している。しかも仕事上の行動が的確。やっぱり元スポーツ選手、監督の指示にはきっちり従うことが得意なのだろうか?
で、ドラマ内でその指示を出していると思われるのが、ビクトリーの代表取締役・高柳雅史(反町)である。ひさびさにこの人の姿をどっしりとテレビで見ている気がするのは私だけだろうか?
芸歴30年以上の反町さんともなると、世代によって捉え方は全く違うはず。ちなみに私の中で"反町隆史"といえば、圧倒的に『ビーチボーイズ』の桜井広海役だ。海辺でチャラ男ぶりを全開にしておきながら、実は優しく、熱い男の物語。高身長に小麦肌というウエポンを持つ、めちゃモテボーイズだった反町さん。そして伝説化したドラマ『GTO』(関西テレビ、フジテレビ・1998年)での鬼塚英吉役。ここでも元暴走族のチャラ男が、生徒のために体を張る姿に感動をしたのだ。
「すごいオーラがある」という若手評あり
そして二作とも主演俳優が主題歌を担当するという、平成期らしい設定。「POIS0N〜言いたい事も言えないこんな世の中は~」は、赤ん坊を泣き止ませるための一曲ではない。ドラマの盛り上げを最高沸点に持ち込む道具だった。
そんな私たちが落胆したのは、彼の女優・松嶋菜々子さんとの電撃婚だった。完全無欠のカップルとはこのことで、ビジュアル、共演がきっかけという二人の出会いに加えて、家庭のことは一切触れないスタイル。もうぐうの音も出ないと倒れている側で、反町さんは俳優として着実に力をつけて、お茶の間の『相棒』(テレビ朝日系・2016年より出演)となっていた。しかも具合のいい中年に仕上がっている。
往年から活躍している人は場合によって「あ……」と、声が出そうになるほど劣化していることがある。方向性が変わっている人もちらほら。それが白髪もシワも味方につけて、スタイルも変わらず、進化したのは「お見事!」以外に言葉が見つからないではないか。某番組で若手共演者が「オーラがすごい」と言っていたことも納得だ。
さて『オールドルーキー』。ここから物語は最終回に向かっていくけれど、レシピ本を大人買いする以上にキュートな反町さんが出てくるはずだと信じて、見守っていきたい。