幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第91回はタレントの富澤たけし(サンドウィッチマン)さんについて。現在出演中のドラマ『マイファミリー』(TBS系)の最終回を目前に控えて、犯人考察が盛り上がっております。ちなみに私の犯人予想は富澤さん。第7話あたりから思っていたのですが、真犯人の動きは捜査内部情報が漏れているとしか思えないこと。彼の演じる吉乃栄太郎、どうも闇を抱えていそうな気配がすること。第9話で真犯人につながる情報の詰まったタブレットの存在を知らず、思わず「タブレット?」と言ってしまったこと……(パソコンは盗んだな?)など、書きたいことはたくさんある。

俳優・富澤たけしに笑いの影なし

  • 富澤たけし

現在、富澤さんが出演している『マイファミリー』。放送回を追うごとに伏線回収、視聴者による考察班が増えていった。いらぬお節介だったら申し訳ないが、念の為あらすじを紹介しよう。ひょっとしたら「え、初めて見るんだけど」なんていう読者さんだっているかもしれない。

鳴沢温人(二宮和也)と未知瑠(多部未華子)、三輪碧(賀来賢人)、阿久津晃(松本幸四郎)、東堂樹生(濱田岳)。それぞれの娘が誘拐された。今だに発見されていないのは、警察に捜査を要請した東堂の娘・心春ちゃん。そして真犯人に近づくために、友人である温人の子どもを誘拐するという強行策に出た東堂は行方をくらましている。皆の思いはひとつ。各々に自力で娘を取り戻したけれど、元通りの生活にはなかなか戻れない。一刻も早く真犯人に辿り着きたい。そして未知瑠がそのカギが隠されたタブレットを発見する。

この物語の面白いところは、主要キャストの子どもが誘拐されていること。それから子どもは全員、娘。この事実が真犯人の何かに結びついているのでは……? と、書きながらもつい何かを疑ってしまうほど楽しい。録画した放送を見てもついつい、吉乃を目で追ってしまう。

この作品で富澤さんが演じているのは神奈川県警捜査一課・課長の吉乃栄太郎。5年前に起きた心春ちゃんの誘拐事件から現在まで、順に発生していく事件と関わる刑事たちをまとめている。多くは語らず、部下には温かい。一応、かっこいいし、渋い。そこにはお笑い芸人としてのすっとぼけた様子はない。

コンビ愛が後押しする、富澤の記憶に残る演技

サンドウィッチマンが『M-1グランプリ2007』で敗者復活戦からグランプリに輝いた、シンデレラおじさんストーリーから早や15年。一度上り詰めた階段から降りることもなければ、常に増えていく階段を上っている富澤さん。あの重そうなボディで上っているというのも、またいい。

彼は次々とドラマに出演しながら『カルテット』(2017年)『大恋愛~僕を忘れる君と~』(2018年)など、ヒット作が多い。絶妙に主役を立てつつ、自分のキャラ主張も忘れない独特さは、俳優が天職だったと思わせる。

彼が作品のいいポジションで演技を続けているのは、コンビ愛が原点にあるのだろうと思う。サンドウィッチマンが公私ともども仲がいいのは、よく番組でも紹介されている。ひと昔前まではバンド、お笑い、アイドルグループ内は互いの連絡先も知らないほど、ビジネスライクが普通だった。むしろ切磋琢磨してぶつかり合うことが美徳とされていたほど。その通説をナチュラルに破った二人の仲の良さは、チップ&デールのようで癒される。そのコンビ愛から、富澤さんが俳優としての活躍を、伊達さんは「頑張ってこいよ」と見送っているような気がする……というのは、私のサンドファンからくる甘さだろうか。

この調子でいつの日かは、ラブロマンスに主演する富澤さんを見ることができるかもしれない。でもそんなことをボヤいた日には、ご本人から「ちょっと何言ってるのかわかんない」と言われそうなので、このコラムに留めておく。