幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第80回は俳優の髙橋文哉さんについて。現在『最愛』(TBS系)に出演中の髙橋さん。彼の芸能界デビューのきっかけは "日本一かっこいい男子高生"を決める香ばしい字面の、ミスターコンテスト。実はこの頃から、すごいのが来たな~と密かにチェックしておりました。そして2021年、まさに飛躍。

どこから見てもモテ気配しかない骨格

  • 高橋文哉

いや、このドラマすごかった。12月17日(金)に控えた最終回まで、主人公の周囲を巡る人間関係が渦のように回っていた。『最愛』というタイトル通り、さまざまな愛が命を動かしていた。「来週の放送が見逃さない!」とは、テレビ誌などで流れてくるけれど、本気で思うことはそんなにない。

でも『最愛』に関しては心底感じた。うっかりSNSでネタバレを踏んでしまうと悔やんだほど。そして原作はなく、オリジナル脚本というところもそそる。それから絶妙なタイミングで流れてくる、宇多田ヒカルの『君に夢中』! 大袈裟ではなく、国産ドラマの底力を感じた。

と、ここまでで作品に対する熱狂ぶりを感じていただけたところで、髙橋さん。彼は主人公・真田梨央の弟、朝宮優役だ。普通に生活をしながら、突発的に記憶を失ってしまうという稀有な病気に苦しんでいる。一時は自分が事件の犯人ではないかと苦しみ、最愛の姉の側を離れるものの、疑いは晴れ、一緒に暮らすようになった。今は姉が弟の難病を治すために取り組んだ、新薬開発の知験を受けることに。

齢20年!高校生役もマンガ実写映画も期待したい

初登場はめちゃくちゃかっこいいウーバーイーツの配達員かと思ったけど、そうではなかった。自分の身を隠して姉の周囲で"情報屋"として働いていた優。「あ、髙橋くんだ!」とピンときた。前述のミスターコンテストで名前を知って、その後、得意の料理を生かしてネット連載をしていた髙橋さん。アイドル路線を走るのかと思いきや、この数年で俳優として露出。「ん? ……あの人……!」と女性陣の目に留まって、ときめきの一滴、二滴を世間へ落としている。

特にこの2021年は『着飾る恋には理由があって』(TBS系)『うきわ -友達以上、不倫未満-』(テレビ東京系)と(個人的にも)話題作に続けて出演。そして『最愛』に至る。世界中がいつもどこか不安で、ストレスを抱えていたようなこの一年。その時間に露出を果たしたこと事態が偉業だと思う。なにかと神経をピリピリさせる撮影現場だったろうし……。

とはいえ、まだ20歳。ひさびさに本当の"新人"。作品を見て学生役をやっていると思いきや、アラサーだったりすることはザラなので、二十歳での実力アピールはすばらしい。マンガ原作実写化の高校生役もいけそうだし、弟役はまだまだ続く。そして見る側は幼い役から羽ばたいていく瞬間の証人になれる。

その成長のひとつになるであろう、来年スタートの『ドクター・ホワイト』(フジテレビ、関西テレビ系)にも出演。いやその前に『最愛』どうなる問題もあるので、まずは最終回を見守ろう。ホントにどうなるんだろう……ドキドキ。