幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第79回は俳優の杉野遥亮さんについて。現在『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)に出演中の杉野さん。この作品から突然、ノーマークだった彼の魅力に気づいてしまった。ひょっとしたらそういう女性が多いのでは……? という共感を求めて『恋です!』から起きたあれこれについて。

ヤンキーの可愛さと無鉄砲さの混和にジュンとする……

  • 杉野遥亮

恋の進展に喜んだり、視覚障害の現実にハッとさせられたり。1時間で感情の動きが忙しい『恋です!』のあらすじを。

赤座ユキコ(杉咲花)は弱視のため、盲学校に通う高校3年生。ある日、ヤンキーの黒川森生(杉野)の出会い、初めは牽制していたものの、森生の真摯な想いに応えて交際がスタート。視覚障害者とヤンキーの恋愛、次から次へと事件が勃発するものの、二人は着実にお互いの想いを深めている。

このドラマの情報を聞いた時に"杉咲花"という、エンタメオタク垂涎のパワーワードに釣られてしまった。"杉野遥亮"という名前に目がいかず、あの女優さんが出てくるのなら間違いないと、勝手に自分で自分に太鼓判を捺していた。これが計算ミスにつながろうとは。

いざ、スタートしてみると視覚障害者を演じる杉咲さんは、ちょうどいい塩梅でかわいいし、愚直な一言で納めるのなら、演技がうまい。でも気になり出したのはその横にいたヤンキー役の俳優さんである。不良という役柄とビジュアルにどうも無理があるのでは……? と思うほどの隠しきれない普通っぽさ。これが次第に変化していく。ヤンキー特有の可愛らしさと無鉄砲さが、見る側にジワジワ伝わってくるのである。

「最近、杉野遥亮、いいよね?」が私たちの情意投合に

実は"ヤンキー"に分類される人種、昔から女性たちの間では評判が良かった。勉強こそできないものの、イケメンも多いし、何より男気があって純粋な人が多い。意外と女慣れしていないタイプもいたので、つき合うと自分だけを向いて尽くしてくれる、浮気の心配なし! という優良物件扱いになる。ちなみに同点として、コミュ障のオタクも挙げられる。つまりリア充慣れしていない、白目が澄んだ人種なのである。

そんなヤンキーを演じる杉野さん。顔にはうっすら傷を作り、どこで売られているのか皆目検討のつかない派手な洋服を着ている。森生は地元じゃ負け知らずだったらしい。このセッテイングとご本人のイメージ、私には大きくギャップがあったけれど、それが第8話(12月1日放送)を終える最新話まで到達すると、心地よいものになってしまった。

ヤンキーを連呼しているが、なんといっても正統派の美形男子。第7話でのお酒につぶれているシーンも良かったし、寝顔にはときめいた。さらに寝顔をユキコの父が大型ポスターにしたときは「このサイズに耐えられるのか……」と、なぜかやや落胆。造形美のムチをビシバシ浴びせられたようだった。こんな人、地元のクラスにはいなかったな……。

杉野さんの演技では表情の動きこそ少ないけれど、森生のいいところが伝わってくるではないか。ああ、楽しい。この軽い興奮を業界友達におそるおそる伝えてみた。数々の有名なCMを手がけている女性で、エンタメには精通している。いつも私なんざの意見は簡単には通してくれない。

(私)「……ねえ『恋です!』で杉野くん、最近、良くない?」 (友達)「……分かるー!」

杉野道が開通した瞬間だったように思う。

ついでに彼女からアマプラで配信中の『僕の姉ちゃん』を絶賛されたので、この原稿を終えたら見てみようと思う。これはもう恋です!