幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第73回はタレントの岸優太さん(King & Prince)について。現在『ナイト・ドクター』(フジテレビ系)に出演中の岸さん。バラエティ番組で見せてくれるポンコツキャラは完全封印、俳優・岸優太として挑んでいるステージは月9枠。CDデビュー以来、初のテレビドラマ出演が人気の放送帯とは、令和のトップアイドルなのだと改めて思う。そんな彼が見せてくれる演技についてつらつらと。

同性にも愛されまくる好ポジション

東京オリンピックで中断されていたドラマのあらすじを、ここでおさらい。

総合病院の夜間勤務専門のチームに属するのは、朝倉美月(波瑠)、成瀬暁人(田中圭)、深澤新(岸)、桜庭瞬(北村匠海)、高岡幸保(岡崎紗絵)。ここに指導医の本郷亨(沢村一樹)を加えた、医師たちが深夜の治療をしている。経験値の差はあるものの、少しずつチームワークが芽生えつつある。その最中、朝倉が現場で倒れてしまう……。

それぞれに事情を抱えたハードワークな医師たちの群像劇は、個人的な感想から言うと面白い。『救命病棟24時』『コード・ブルー』などドラマによって、数々の名救命医たち(?)を輩出してきたフジテレビだ。放送スタート時は当然のことのように、既視感など名作と比較する意見をSNSで散見された。その気持ちも非常に分かる。

でもいつの間にか「あれ、次はどうなるんだろうと」淡い期待をしながら見てしまう理由には主演の波瑠さんがいる。彼女はいつも凛としていて本当にすごい。演技がまるでマジックのようで、どんな嫌味っぽい作品も波瑠さんがセンターの立つことで、面白く変換されている。

そんな大女優や出演作の絶えない田中さん、演技だけではなく歌を歌っても大ヒットの北村さんなど、諸先輩たちに囲まれて、新進気鋭のアイドルはどう出て来るのだろう? と第一話を見ていた。結果は非常にナチュラルで、普段、グループや事務所の先輩たちにイジられている素のまんまの岸くんだった。

こんなお兄ちゃんいたらいいな、の上位互換

驚くことに第1話から出演シーンが非常に多くて、(勝手に)マジック女優の波瑠さんと対等な目線で演技をしていた。深澤は病気の妹を支えながら内科医をしていた。本来であれば踏み入りたくなかった、救命救急医療。でも妹を入院させてもらっているという事情から、引き受けてしまう。当然のように、慣れない現場では四苦八苦で、けして使いものになっていない。そんな自分のジリジリとする深澤……。

でも少しシーンが変わると、深澤にほっこりさせられる。第2話で夜間医療の医師として、子どもを診療していた時の様子が優しさに溢れていたのだ。

岸くんのこの演技に好感を持つことができたのは、優しさが前面に出ていたこと。このシーンだけにとどまらず、絶妙な猫背で同僚、患者、もちろん家族にも、片想いのお相手かもしれない美月にも、真摯に対応しているのがよく分かる。こういう演技はドラマオタクから言わせると、本人の人柄が強く反映されていると言える。本性を隠しきれない顔相は確実に存在している。

その推察からすると、彼が愛されキャラであることが伝わってくる。このドラマの番宣でさまざまな番組に出演していた岸くんは、田中圭さんからも「乳首を触られたりして(笑)」と、かなりイジられていると話していた。昨年の24時間テレビで共演していた海老蔵も、SNSで彼のことを褒めていた。あんなに厳しい人なのに……。

ちょっかいを出したり、その人のことを話題にするのは男女の恋愛感情にもああらわれている"好き"の証拠である。興味もない、タイプでもない人は話題にもあげたくない。でも岸くんの愛され力は、所属事務所の大きな枠組みを超えて、確実に羽ばたいているのがファンでない私にも分かる。まとめると……きっと岸くんも深澤も、こういう兄弟がいたらいいな、の上位互換という存在なのだ。

さて『ナイト・ドクター』。次回の放送はどうやら深澤が大きく絡んでくるらしい。オリンピック閉会式を終えた当日の放送を楽しみだ。ちなみに文中、敢えて"岸くん"となんのためらいもなく書いていた。それもキンプリの岸優太くんとしての周知度なのだろうと加えたところで、終了。