幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。
第64回は俳優の岡田健史さん。現在『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(以下、ウチ彼)(日本テレビ系)に出演する岡田さん。2018年の『中学聖日記』(TBS系)の鮮烈デビューから早や3年。着実にいい男へのホップステップジャンプを進んでいく青年のたくましい後ろ姿について。
教師に恋した少年→新人刑事→大学生→歴史の人へ
北川悦吏子さんの脚本、菅野美穂さんと浜辺美波さんの"美"以外に表現方法が見つからない親子役と、放送前から話題に溢れていた『ウチ彼』。折り返し地点を過ぎた、ドラマのあらすじを紹介しよう。
売れっ子恋愛小説家の水無瀬碧(菅野)と、大学生の空(浜辺)は、仲良く二人で暮らす親子。マンガオタクのおかげで、恋することを知らなかった空にも少しずつ春の訪れが。そして一時期はスランプにハマっていた碧も、担当編集者・橘漱石(川上洋平)たちの存在もあって、書くペースを取り戻していた。そんなある日、空は碧と親子関係がないのでは……? と疑いを持ち始める。
岡田さんはこの作品で、空の同級生・入野光役。イケメンで勉強もできる、女子にもモテて遊び人と"チャラ男"の代表格を演じている。ただ光は表に出すことはないけれど、空と同じオタク。実の親からは「出来が悪い」と距離を置かれる裏の顔も持つ。本当の自分で接することができる空との関係性が気になるところ……なのだ。
個人的に彼のデビュー作『中学聖日記』は、当時はリアタイ、アマプラで、何度か見直してしまうほどハマった。教師に恋をするという最高に甘酸っぱいシチュエーションを、岡田さんはデビュー作とは思えない絶妙な演技で通過した。
そこから"期待の新人"という言葉のままに成長をして、数々の作品に出演している。ゴールデンタイム放送のドラマだけで言うと『MIU404』(TBS系)の新人刑事役から、今作。道は大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合ほか)へと繋がっていく。彼はまさにスター街道をひた走っている。そしてその成長を重ねていく様子を、お姉さんたちは固唾を飲みつつ、時にはときめきながら見守っている。
日本全国のスポーツ少年に行先に照らした、希望の光
デビュー時に数々のメディアが報じていたのは、彼が高校野球の選手だったこと。芸能事務所からスカウトを受けていても、野球を優先して断り続けていたというエピソードも有名だ。これは岡田さんが切り拓いた新しい道。
汗と土と成長期にまみれて、春夏に感動を落としてくれる高校球児たち。ほとんどの男子は野球に関わる進路を選択している。それももちろん素晴らしい道ではあるけれど、俳優を志す人は……いるんだろうか? おそらく野球一筋で余分な情報は脳に入っていないはず。でもキラリと光る才能はグラウンドにもいる、そのことを示したのが岡田さんではないだろうか。そういえば友人が「全然野球はわからないけれど、球児の中にイケメンを発見するのが楽しい」と、甲子園中継を見ていると言っていた気持ちが少し分かる。芸能関係者も今ではスポーツ会場にスカウトの目を向けていると聞いた。厳しい部活動をクリアしてメンタルを鍛えてきた人は、厳しさに加えて魑魅魍魎が跋扈する芸能界には向いているはずだ。
その一つの証明だろうか? 『中学聖日記』での彼の演技には本当に裏がなくて気持ちよかった。セリフ回しとか些細なことは後々、成長していくものとして、彼の才能を感じたシーンがある。
担任の教師・末永聖(有村架純)との恋をあきらめた黒岩くん。その3年後、高校生になった黒岩を見て、聖の元婚約者が
「この年の3年(の成長)やばいな……」
とつぶやくシーンがあった。その登場の瞬間が、めちゃくちゃ瑞々しかったのである。髪型とか色々な演出はあったと思うけど"男の子の3年間の成長"を一瞬で表現していたことを忘れない。
最近ではインスタグラムでも、独特のアート感覚を披露している岡田さん。あの広い肩幅はたくさんの物語を秘めている。これだけ連ねると"かっこいい!"だけしか残らないけれど、昨年、『スッキリ!』(日本テレビ系)に出演時のこと。『コロナ禍』のカンペを「コロナうず」と読み間違えて、照れていた岡田さんがいた。
これだから成長を見守るのはやめられないのだ。