幼少期から熱血ドラマオタクというライター、エッセイストの小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第55回はタレントの浜野謙太さんについて。現在『DIVER-特殊潜入班-(以下、DIVER略)』(フジテレビ系)に出演中です。この原稿を書こうと思って彼のインスタを覗いたら、文章と写真も絶妙に面白くて嫉妬をしてしまいました。演じて、歌って、書くこともできて。次に彼へリクエストをするとしたら、泳ぐ、跳ぶくらいしかない気がするのですが、それもあっさりクリアできそうですね。

ドラマには振り返れば浜野がいた

まずは『DIVER』のあらすじを紹介しよう。

事件の捜査のためにあらゆるシチュエーションへ潜入する通称『D班』。その一員、黒沢兵悟(福士蒼汰)は警察も唸るほどの高い知能を持っている。佐根村将(野村周平)を含む、メンバーと共に潜入捜査を繰り広げる。黒沢がその捜査の先に目指すものとは一体?

浜野謙太

『4分間のマリーゴールド』(TBS系 2019年)以来、ほぼ1年ぶりに福士くんをテレビドラマで見た。ただ今回は驚くほど"ワル"を全面に押し出した黒沢役。暴力はもちろん、下手すりゃ人殺しも辞さない勢いなのだ。常に上昇気流に乗っている彼の好感度が崩れるのではないかと心配している。

黒沢は事件解決のために様々な潜入捜査をするのが、ドラマの見どころ。ハイスペックな頭脳を生かして、半グレ集団に片足を突っ込んだり、大学生に扮してみたり。その状況を常に把握して、適切な指示を出すサポートをしているのが浜野さん演じる宮永壮一だ。ハッキングを得意技としていて、基本はベースにしている建物から出ることなく、常にPCを前に仕事をしている。偏屈そうに見えるけれど、実は冷静に状況を把握している。

出演者欄に浜野さんの名前があったので、今回はどんな役なのかと期待していたら「おお……全く動かない役……」。少し前まで『ディア・ペイシェント~絆のカルテ~』(NHK総合 2020年)で、不正を犯して逮捕されてしまった、気の弱そうな大病院の事務員だったのに。確かその前は……? と思い返すと、物語の隅にはいつも浜野さんがいる。ちょこまか、ちょこまか。そんな表現がよく似合うように、浜野さんはいつもどこかで何かを演じている。

ミニマムなサイズ感はめちゃくちゃ魅力的

イメージで言うなら、少し前に流行した『ひょっこりさん』のようだ。昨年は『ラジエーションハウス』では、レントゲン技師に。『モトカレマニア』では、田中みな実を恋のお相手に会社員役。(ともにフジテレビ系 2019年)他にもゲストとして、数多くの作品に出演。本当によく彼のことを見る。

時には悪どい役もあった。私が印象に残っているのは映画『闇金ウシジマくん Part3』の天生翔役。ネットビジネスのカリスマと呼ばれていても、実は一般人から金を巻き上げているだけのいやらしい役。真顔で行為に及ぶ、ベッドシーンは本当に笑った。

なぜ彼が演じると、悪どさが浄化されているのだろうか? 考えていくと答えはあの身長にあった。ネット情報によると157㎝。男性にしてはミニマムサイズだけど、これは大きな魅力だと思う。ナインティナインの岡村さん、俳優の濱田岳さんにしかり、動きが小さいぶん、可愛らしさが滲み出てくるので嫌味がない。何をやっても全力疾走している感じがしているように見える。これは“徳”である。そして最終的に可愛い。ちなみに個人的に、なぜか身長の低い男性が昔から好きなので、浜野さんは大変魅力的である。

ドラマや映画をひたすら走ってきて、少しだけ速度を緩めているのが今の浜野さんの配役におけるポジションだろうか? いやでも大物になることなく、いつまでも全力お兄さんであり続けていて欲しいと思う。