エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。
第5回は女優の山口紗弥加さんのことを書いていきます。この春のドラマ『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系 2018年)で魅せた、次々に周囲の人間を毒殺するサイコパス演技が話題騒然となりました。確かにあの支配欲にまみれた専業主婦の様子はホラーの域でしたからね……。そんな最近、出演作が途切れることのない大人気の38歳の女優さんについて。
洋服に負けない、圧倒的なセンスを誇る沙也加姫
この数年間で「うわ~、この人好きだわ……」と思った女優を挙げろと言われたら、彼女の名前が思い浮かぶ。彼女との(勝手に)出会いは『若者のすべて』(フジテレビ系 1994年)で萩原聖人の妹役。まず14歳という可憐さに加えて、自閉症患者という難しい役ががっちりとサマになっていたことを鮮明に覚えている。
そのまま「三井のリハウスガール」路線に乗るのかと思いきや、歌手デビューやグラビア写真集に進出していく山口さん。今となってはそれもいい芸の肥やしなのだろうけど、そこからよくテレビの露出は続く。とにかくずっとどこかで彼女のことを見ている印象なのだ。
山口さんがつい目についてしまって記憶に残る理由を挙げるとすれば、おしゃれだからだと思う。『モンテ・クリスト伯』でも、38歳にしてぱっつん前髪がなんの違和感もなく見られていたのは、彼女のセンスの良さゆえ。実は私、かつては女性雑誌の編集部員でバリバリのファッションページを作っていた経験がある。乗り物といえばもうロケバスしか乗っていないのではないかと思うほど、撮影ラッシュの日々を送っていた。ちなみに今もある。朝4時起きはやっぱりつらい。
そんな経緯から山口さんを見るといろいろコーディネートの想像が湧く。コットン命のオーガニック風、キャリアウーマン風、スナックのママ風……など、どんな洋服にも負けないビジュアルが彼女にはある。他の女優さんと並ぶとそれも圧倒的にセンスの良さが全身から放出されている。それが山口紗弥加さんの強みにつながっているというのがスナイパー小林予測。この力はもう先天的なもので、ものすごい美人がどんなに頑張っても手中にすることのできない魔法のようなものだ。それを多くの人はファッションセンスと呼んでいる。
数年前、山口さんはともさかりえさんのブログにも頻繁に登場していた。ともさかさんもファッションだけではなく、レシピまでおしゃれに決めてくる女優だ。やはり類は友を呼ぶというのだろうか。
そして2013年ごろからはドラマへの出演が増えた山口さん。何かを企んでいそうな女を演じるバイプレイヤーなら山口紗弥加。そんな触れ込みが業界に回ったのだろうか、2015年春には『ようこそ、わが家へ』(フジテレビ系)、『スケープゴート』(WOWOW)、『ヤメゴク~ヤクザやめて頂きます~』(TBS系)とワンクールで3作品に出演している。撮影にタイムラグはあると思うけれどやっぱりこれは快挙と呼びたい。
何かを企んだ、はらんだ女をやらせたら日本一
そして山口さんの演技で私の胸を撃ち抜かれたのが『運命に、似た恋』(NHK総合 2016年)の白井真帆役。新進気鋭のデザイナー・ユーリ(斎藤工)と不倫するセレブ妻役なのだけど、彼に近づく女たちを分かりやすくいじめていく様子は見ていて笑いがこみ上げてくるほど。このときは赤のワンピースがよく似合っていた。一般人が着ようものなら即、事故が発生しそうなボディコンシャスなタイプだった。
『カンナさーん!』(TBS系 2017年)ではアパレルの幹部という設定で、やや失速感はあったものの『モンテ・クリスト伯』ではあるべき姿を取り戻してくれた。お帰り! 山口さん!!
彼女が演じた入間瑛理奈は一人息子と、前妻の娘がいる専業主婦。資産家で警察官僚の夫を愛し、家族との生活を守るために殺人鬼に。うれしそうに殺人用の毒を見つめたり、一心不乱にトマトをかじる姿がネット上で話題に上がった。最終回では夫に見捨てられたと自殺。口から血を出して死んでいく姿も綺麗だったなー……。この作品では全編通してフリルや花柄でファンシーな衣装。狂気とうまく融合させていたのは彼女の存在感はあっぱれ。
フルスピードで立て続けに作品に出演してきたけれど、しばしの休息だろうか。夏ドラマに出演が予定されていない。でもまるで海を回遊するかのように、気持ち良さそうに、演技を重ねてきた人だからまた作品で会えるのも近いはず。
スナイパー小林
ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。