エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る“脇役=バイプレイヤー”にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。

第21回は女優の高岡早紀さんについて。現在放送中のドラマ『向かいのバズる家族』(読売テレビ・日本テレビ系)に出演中の高岡さん。実は写真集を持っているほど彼女のファンです。ドラマで見かけると嬉しくなるし、全く別の人種だと自覚はありますが"なりたい女性"と聞かれれば必ず一番に名前を挙げるほど。見つめ続けてきた彼女の魅力をこのコラムでどこまで表現できるか、いざ、勝負。

高岡早紀

飽きのこない、つい触れたくなってしまうあの"質感"

篝あかり(内田理央)は普通の家庭で育った、カフェの店長を務める26歳。ある日、ふとしたSNSのバズりがきっかけで人気者に。ただ篝家、実は両親と弟の家族全員がバズっており、各々に秘密を抱えていた。そしてあかりにも人には言えない秘密が……

というのが、新ドラマ『向かいのバズる家族』のあらすじ。高岡さんは篝家の母親・緋奈子役。専業主婦という立場に飽きてしまい、動画サイトに自分が料理を作る様子を日々アップしている。娘からはそのことを嫌がられていてもやめる様子つもりはない。ちょっとぶっ飛んだ感じの母親役を高岡さんは楽しそうに演じている。

このコラムの読者のみなさんに、高岡さんはどんな風に写っているのだろうか。例えば『花のち晴れ ~花男 Next Season~』(2018年・TBS系)で演じた馳利恵のような意地悪な継母役。それから映画『モンスター』(2013年)で主演したセクシーな役。大きく分けて二つのイメージで捉えている人も多いはずだ。

実は彼女の年齢は46歳、3人の子どもを持つ母親。あの見た目にしてアラフィフの年齢に到達しているというのだから、みなさんもくまなく驚いて欲しい。1988年の歌手デビュー後、もう数え切れないほどの作品に出演を重ねてきた。そういう女優はもちろん、他にもたくさん存在するのだけれど淘汰されていく。厳しい状況の中で彼女がずっと飽きられない理由はなんだろうと想像していくと"質感"ではないかというのがスナイパー小林予測。

よく記事で見かける『体当たりでベッドシーンを……』というフレーズ。もちろん高岡さんもその一人だとカウントされるだろうけど、ただいやらしいだけの演技を求めるなら他にもいる。でもあのやわらかな雰囲気から醸し出されている、触りたくなるような質感。毛並みがいいタオルや毛布の肌触りにどこか似ている。

見た目とは裏腹のハードな生き方もすごくいい

「やだ~そんな顔しないで! 今は二人(天馬と音)がここまで思い合っているって分かって、私は心から応援したいって思っているわぁ」

と、満面の笑顔なのにどう見ても音を脅している『花のち晴れ ~花男 Next Season~』の意地悪な継母役のセリフだ。完全に怖い継母ではなく、欲望と優しさの狭間のような独特の存在感を演技でアピールしてくる。

彼女のやわらかそうな質感が人気の理由ではないかと、前述したけれど、女性として私生活の強そうな生き方も好感が持てる。最初の結婚相手は同じ俳優だったけれど、芸能活動が別れた女房よりも激減、ついには出家をしたという風変わりな経歴。事実婚だったという長女の父親は、借金を作って逃げたという噂も。つまりは全てダメ男だったのだけど、その尻拭いは頼ることなく自分で解決して絶えない人気をキープしている。

恋の噂も多く聞く。週刊誌の記事によれば、家庭を壊した男性も多いらしいけど、あの高い声と絶妙な抑揚で話しかけられたら、全男性はよろめくと思うのは私だけだろうか? そしてその経験もすべては高岡早紀にしか出せない、しつこさゼロの妖艶さにつながっているような気がする。

あの独特の存在はすべて私生活の賜物、ということで私の高岡早紀愛語りを終わりたい。

スナイパー小林

ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。