エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。
第16回は俳優の町田啓太さんについて書いていきます。2019年には映画『PRINCE OF LEGEND』『LDK ひとつ屋根の下、「スキ」がふたつ。』の2作品が公開。ドラマ『盗まれた顔』(WOWOW)に出演と好調なバイプレイヤーっぷりを発揮している町田さん。彼が世代をひょいと飛び越えて愛されているその理由とは?
あっさり系、昭和ハンサム顔を武器に多世代からラブコール
町田さんの印象がドン、と飛び込んできたのはやはり朝ドラ『花子とアン』(NHK総合・2014年)の村岡郁弥役。ヒロインの安東はな(吉高由里子)の恋のお相手、村岡英治(鈴木亮平)の弟役として出演していました。イギリス帰りのちょっとインテリ風な郁弥は、関東大震災により命を落としてしまう悲しい結末を迎えている。
「え、この人、石原プロかどこかの所属?」目新しいいい男が出演していることはし理解したものの、町田さんの顔はイケメンというよりも、ハンサムと言った表現がよく似合う昭和顔。骨格のよく分かるフェイスラインに、黒くてくっきりとした眉。いいあんばいの顔の濃さ。石原プロモーションの新人として、炊き出しに参加していてもなんら違和感はない雰囲気だ。
でも調べてみれば彼はHIROさん率いるLDHの俳優部門『劇団EXILE』の所属ではないか。いまだにお目にかかっていないけれど、歌ったり踊っていたりした時期もあるらしい。
昭和顔も2019年の現代において古くさい位置付けではない。もう時代が一周回って、新種のイケメン種類に帰属している。そうなると町田さんは20代にもウケがいいだろうし、所属事務所が企画する『PRINCE OF LEGEND』(日本テレビ系 2018年)では先生界の絶対的いい男エースとして出演。こちらは作品自体、多種多様のイケメンが多数集合する……ということがテーマになっている。
女性からすると感謝状を贈りたいほどの愛眼作品だけれど、彼が朝ドラから20作品以上に出演して、着実に身につけてきた"演技"とはやや路線が外れる。それでもきっちり出演を果たしているのは、石原軍団で見られる義理堅さや男の友情の一貫なのだろうか。そういう姿勢は非常に好感度が高まる。
NHKドラマ作品から愛され続ける、ほどよい品の良さ
若手世代のハートをキャッチしたら次は中年、シニア世代からの支持も欲しいところ。と、ここで心配することはない。町田さんには時代を超えて愛される昭和顔という大きな武器を持っている。
そして彼が出演する作品で特徴的なのは、NHKからの愛され度。前出の朝ドラを皮切りにして『美女と男子』、『ガッタン ガッタン それでもゴー』(ともに2015年)『定年女子』(NHKプレミアム 2017年)『女子的生活』、『西郷どん』(2018年)と、毎年出演というもはや俳優としては渋谷のスタジオに皆勤賞モノ。民放局よりもNHKを好む傾向が強い、高齢者世代にも確実に顔は定着しているはず。
「ああ、あの朝ドラと大河の子でしょ?」 そんな声が聞こえてきそうだ。
ちなみに私は『美女と男子』の新人俳優役が好きだった。マネジャー役で主演女優・仲間由紀恵さんのインパクトにひるむことなく、ホントに新人っぽさ全開で演じていたことが逆に好印象になった記憶がある。あとは絶妙な温度で演技に熱さもあった。
このイメージ戦略は着実すぎてお見事、のひと言に尽きる。28歳とは思えない安定感もプラス要素にきっちり変換させているではないか。それらを彼が企てたものかどうかは分からないけど、ひょっとしたら営業マンになっていても好成績を残しているんだろうというのがスナイパー小林予測。きっとバイプレイヤーを卒業する日も近い。
昨年の秋ドラマ『中学聖日記』(TBS系)では彼女を中学生に奪われて、最終的には年上女性を妊娠させるという、川合勝太郎役で新たな爪痕を残した町田さん。20代ラストの今年、どんな顔が見られるのかとっても楽しみでございます。
スナイパー小林
ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。