幼少期から熱血ドラマオタクというエッセイスト、編集者の小林久乃が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。
第131回は女優の森田望智(もりた・みさと)さんについて。配信中の『シティハンター』(Netflix)のほか、現在放送中の朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)にも出演中の森田さん。巷では演技の振り幅から早くも"カメレオン"という声もちらほら……。ずっとテレビを見続けているオタクからすると、"すごいの"がやって来たという期待が溢れ返る女優さんです。
可愛すぎる"昭和明菜フェイス"
まずは森田さんがご出演されている、各所で話題沸騰中の映画『シティハンター』のあらすじを。
1985年に発売された人気漫画の実写版。女好きの冴羽リョウ(鈴木亮平)はスイーパー=始末屋として裏の世界でNo.1の腕を誇る。新宿を拠点にして、元刑事の槇村秀幸(安藤政信)とコンビを組み、次々に難事件を解決していたある日。槇村が何者かによって殺されてしまう。ショックを受けるリョウの元を訪れたのは、槇村と血縁のない妹・香(森田)だった。香はリョウと共に兄を殺めた犯人を追う。
上映時間の104分間を言葉で表すとしたら、本当に一瞬。東京ディズニーランドで、スペースマウンテンに乗車したようだった。アクションに笑いにモッコリと、勢いだらけのコンテンツが、あり得ないスピードで押し寄せてくる。原作を全く読んだことのない私でも、充足度は満点だった。それもそのはず、主役はどんな役でも面白く料理してしまう、鈴木亮平。
2011年に自身のブログで「冴羽リョウ、まじでやりたいなぁ」と綴っていたという、彼の夢が叶ったというバックストーリーが胸を熱くさせる。とにかく見終わった瞬間の爽快感は夏の一口目のハイボール以上なので、ぜひ観てほしい。
そして今回、期せずしてリョウの相棒となった香を演じた森田さん。再度書くが原作を全く知らずとも、破天荒な相棒を持ってしまった香の戸惑いと、兄を殺した犯人を許せない気迫が伝わってきた。1980〜1990年代が舞台になる本作、香のコーディネートも当時を彷彿させる、デニムスタイルもちらほら。ヘアスタイルも、毛量の多い重ためヘア。これを当時まだ誕生していなかった、27歳がどう魅せるのかと思っていたけれど、完璧にマッチ。ひょっとしたら年齢詐称をしているのではないかと思うほど、昭和スタイルが似合っていた。
私が思う森田さんの魅力のひとつに"昭和明菜フェイス"がある。ぱっちりとした瞳ではなく、ちょっと眠そうな奥二重。唇は艶っぽさを醸し出す、ぽってりタイプ。この顔立ちの特徴はどんなコーディネートも難なく着こなせること。今回『シティハンター』で昭和スタイルが似合っていたのは、そのせいだ。おそらく彼女のキャリアにも役立っている。
どんなコーディネートもお手のもの
話題となった『全裸監督』(Netflix)では、脇毛を生やしたセクシー女優に。私が「この人、すごい色気……!」と気づいた、『恋する母たち』(TBS系・2020年)の不倫相手役。『作りたい女と食べたい女』(NHK総合・2022年)では、どこか気の抜けた、でも恋愛はしたいOL役……と、作品のたびに立ち位置が大幅に変化。でも違和感を覚えないのは演技力もさることながら、彼女の衣装の着こなしぶりが一役買っていると思う。
そして今、話題となっている『虎に翼』では女学生時代から、嫁ぐことを当然としていた花江役。花江は主人公、猪爪寅子(伊藤沙莉)の友人でもある。放送第1週では、結婚よりも職業婦人になりたいという寅子に花江は甲高い声で物申した。
「ええ? 寅ちゃんってそんなお子ちゃまだったの?」 「……はて」
さらに一目惚れをした寅子の兄と結婚するために、寅子から情報を聞き出して、兄から結婚を申し込まれるようにしたと花江。
「どうしても欲しいものがあるなら、したたかにいきなさいっていうこと」
高い声で抑揚をつけながら、「あ〜、いたいた。昭和にも平成にも令和にもいたいた。計算女ちゃん」と失笑キャラクターを見事に演じていた。そう、結婚とは自然な流れを狙うのではなく、狙い撃ちしていかないと手中には収まらないと既婚女性たちが言っていたことを思い出す。花江は正しい。
日々、全力で進まないとすぐに取り残されてしまうような時代だ。森田望智の男女関係なく和んでしまう雰囲気(あくまで一見のみではあるが)は、殺伐とした昨今のひとときの癒しなのである。でも個人的には彼女の小悪魔ぶりが突出した瞬間が、大好物だったりもする。