エンタメライターのスナイパー小林が、テレビドラマでキラッと光る"脇役=バイプレイヤー"にフィーチャーしていく連載『バイプレイヤーの泉』。第11回は小瀧望(ジャニーズWEST)さんのことを書いていきます。現在ドラマ『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日系)に堀川広樹役で主演中の小瀧さん。2年間でいくつかの作品に出演されていますが、まあ面白い。主役のジャマにはならず、きっちり自分の爪痕を作品へ残していく様子が上手すぎます。彼がどれだけ楽しい演技を魅せているのかを紹介していきましょう。
"イケメンなのに残念……"という設定が似合いすぎ
現在、小瀧さんが出演するのは『僕とシッポと神楽坂』。嵐の相葉雅紀さんが主演を務める動物病院と、神楽坂を舞台にした物語。小瀧さんが演じる堀川は、獣医大生。第1話の放送では終盤に少し登場しただけで、どんなキャラクターなのかも掴めずに終わってしまった。
公式HPを探ると堀川の紹介に"知識も豊富で優秀だが、そのやる気が前面に出過ぎて、人の話を遮りがち"という記述があった。これは小瀧さんの本領が発揮されるのかもしれないと第2話に期待が膨らんだ。それほど私は、彼の演技のファンである。
小瀧さんの演技をはっきりと認識したのは『世界一難しい恋』(日本テレビ系・2016年)だ。この作品、個人的にここ数年のテレビドラマでは一番好きだ。鮫島零治(大野智)はホテル経営のエキスパートと言われる敏腕社長と呼ばれているのに、恋愛に関しては劣等生、いや一年生なのか。それでも柴山美咲(波留)となんとか愛を成就させる物語なのだけど、大野さんの演じる不器用な男が本当に面白かった。ドラマの続きが気になってリアタイするために必死で帰宅するほどハマっていた。
その鮫島ホテルズに勤務する社員・三浦家康役が小瀧さん。なんだか役名からして面白い気配が満タンだ。入社2年目にも関わらず、妙な自信家というキャラクター。自分の勤務する会社の社長に向かって
「だって俺、そういうのは分かっちゃうじゃないですか」 「(社長に信頼されていると勘違いしつつ)右腕だけじゃなく、左腕もお任せください」 「チャンスをつかみ、抱き寄せる男。それが三浦家康です」
と、堂々と言い放ってしまう。インパクトのあるセリフをサラッと自分のものにして演じている姿に俄然、興味が湧いた。もちろんセカムズの主役は大野さんだったけれど、きちんと三浦家康の役柄は残ったのだ。「あの子、何者なんだろう……(スナイパー小林心の声)」
長く濃いまつ毛の向こうにある、脱アイドルの顔
小瀧さんはジャニーズWESTというグループに属する、正真正銘のアイドルだ。前述で紹介した三浦役が強烈だったのは、彼の可愛らしいビジュアルも確実に後押ししたと思う。よーく見ると、くるんとした瞳に長く濃いまつ毛と目力100%。正統派のイケメンではないか。
その美しさを引っさげて、小瀧さんはまた視聴者をニヤリとさせる作品に出演する。それが『もみ消して、冬』(日本テレビ系・2018年)の尾関光希役だ。警視庁のSITとして勤務、犯人説得を得意としている。
ドラマ内では毎回、尊敬する警察の先輩・北沢秀作(山田涼介)の相談にのる下りが尾関のハイライト。秀作が自分の悩みだと尾関に言えず、友人のことと仮定して相談。毎回、話がうまくかみ合わない様子に大笑い。また、このドラマでは秀作の姉・知晶(波留)に片思いをしてひたすらプロポーズをし続けるシーンも。真顔で堂々としながら視聴者側を笑いに巻き込むのは、お見事だった。小瀧さんはどういうマインドで演技に向かっているのか、本人に問いていたくなる。
彼のメインスペースであるジャニーズWESTとしての顔はまったく知らない。でもイケメンなのに残念、ついでに天然という微妙な設定をなんなくクリアしてくるのだ。アイドルとしてステージに立ったときもきっと楽しいんだろうと、また別の興味や期待をそそってしまうではないか。
そして年齢を確認してみると、なんとまだ22歳。きっとこれからさまざまな役が彼のもとを訪れると思うのだけど、もうしばらくはこの路線で笑わせてほしいと願わんばかり。だって楽しすぎるんだもの……。
さて『僕とシッポと神楽坂』。ドラマのメイン舞台となる坂の上動物病院でバイトをしながら、ナルタウン動物病院の獣医師に憧れを抱くとな。またどんな小瀧ワールドにお目にかかれるのか、毎週金曜の放送を待とうと思う。
スナイパー小林
ライター。取材モノから脚本まで書くことなら何でも好きで、ついでに編集者。出版社2社(ぶんか社、講談社『TOKYO★1週間』)を経て現在はフリーランス。"ドラマヲタ"が高じてエンタメコラムを各所で更新しながら年間10冊くらい単行本も制作。静岡県浜松市出身。正々堂々の独身。